人生考路

個人と社会のウェルビーイングを高める教育と学びを探究する

学習環境が学びを創る

一昨日ですが,うちのIRスタッフと内田洋行ショールーム「未来の教室Future Class Room」を訪問してきました。

 

www.uchida.co.jp

 

12年前に設置されていて,その当時から知っていたし,営業部長さんとは随分前から知り合いで,何度か声かけもいただいていたのですが,なかなか行けておらず。先月の本学IRフォーラムにも来てくれて,改めてお声がけいただいたので,スタッフと調整してようやく実現しました。

 

今だからこそ良かったかなとも思います。当時はアクティブラーニングの推進を目的として,机や椅子,壁面複数面への投影などが中核だったと思います。今回の訪問では,コロナ禍でのオンライン授業の経験や関連するテクノロジーの進化が,教室環境に実装されていて,それらを体験・体感することが出来ました。一つ一つは「こんなの見たことない!」みたいなものはなく,様々なツールやアプリケーションをいかに効果的・効率的に使用・運用できるかというところに感激しました。その意味では,「未来の教室」ではもはやなく「現代の教室」になっているのかなと思いました。GIGAスクール構想なども相まって,動き出している地方自治体と教育行政なども増えてきましたね。そうなってくると,技術的には既に様々なことが出来る環境があるにも関わらず,大学はどうだろうかと感じます。

 

コロナ禍でオンライン授業が一斉導入されたという経験は,日常の学習環境にどのような影響をもたらすだろうか。外部資金等で特別な部屋が学内に数個あるかないかみたいな大学も少なくないと思います。依然として,教室環境は固定机に長机,ICTどころか輝度の低いプロジェクターに鮮明さにかけるRGB仕様の部屋も少なくなかったり。古くなったらリプレイスするだけで,リノベーションの発想がなかったりします。

 

色んな大学で聞こえてくる声は,施設設備・管財関係の部署と教学部署とがほとんど連携しておらず,教育・学習の観点(どういう環境だとよりよく学べるか)ではなく,単純な予算の観点(どの業者がより安いか)から決まってしまうという点です。もちろん,予算度返しで出来るものではありませんが,入試対応といった観点もありますが,もっと戦略的に予算確保含めて,両者が連携のもと進めることが不可欠だと思うのです。その実現のためにも,該当する部署の方や執行部の方々に,こうしたショールーム等に行って自身で体験してイメージを深めてもらうことも大事なのかなと感じます。

 

広さに対する座席の数,照明,音響,机や椅子,プロジェクター,スクリーン等,学習環境はこれらの相互作用によって学習効果が跳ね上がります。また,FDの観点からも,環境が変われば出来ることも変わる。教員の挑戦を生み出し,結果的に授業改善が進む。学習内容や教育方法といった側面ももちろん重要ですが,ハード面での学習環境の影響は極めて大きいです。ただ,それがなかなか施設設備に反映されない。本当に多くの大学で耳にしますが,どうにかならないものかなと思います。うちも正直やりやすい教室を探すのに一苦労で,割り当てられる部屋のほとんどがやりにくかったりします。もちろん,環境が悪いからアクティブラーニングは出来ないという言い訳は絶対したくないし,どんな環境でも出来るは出来ますが,DXやICTなどこれだけ時代が変わっているのに。もう少し教室の学習環境がアップデートされることを切に願います。ラーニングコモンズみたいな授業外学習のためのスペースは一定進みましたけど,通常の教室環境はかなり現代的教育ニーズに対応出来ていないなと思います。

 

今回の訪問ではオフィスフロアも見させていただきました。基本的には社員はフリーアドレスで,自分の好きな席で仕事をしています。前日と同じ場所には座らないように,といったルールはあるようです。椅子も色々で高さも色々。椅子が変わると発想も変わります。そういうところも普通に取り入れられています。部屋の仕切りはなく,あちこちでディスカッションやプレゼンテーション,オンライン会議などできる空間になっていて,カフェスペースや植物(フェイク)なども配置されています。

 

大学でもそういうところはあるかもしれませんが,依然として部署単位に部屋が仕切られていたり,座席はもちろん固定性,空間にゆとりもなく,創造的な仕事ができる環境ではないように感じます。学生の学習環境もそうですが,大人(職員)の学習(職場)環境も大事かと思います。

 

以前から学習環境については色々思うところがあったので,今回の訪問でさらにその思いが強くなりました。諦めるのは嫌なので,これからの学生の学びと成長のために,出来ることをしていきたいと思います。