人生考路

個人と社会のウェルビーイングを高める教育と学びを探究する

ソーシャルアントレPGキックオフを終えて

気づけば10日ほど経ってしまいましたが,先週8日には,関大ソーシャル・アントレプレナーシップPGのキックオフイベントが開催され,無事に終了しました。

 

関大梅田キャンパスにて10時から18時までと,長時間のイベントでしたがあっという間で楽しみながら進行することができました。

 

何より今回のイベントの目的は,参加する学生の心を掴んで,出来るだけ多くの参加者と交流し,心理的安全性を確保し,プログラムへのモチベーションを高めることでした。学部・学年の異なる学生たちが集まって,チームを作って,数ヶ月間活動を共にします。我々スタッフがずっと関わり続けるわけではないし,全員で集まる機会はそうそうないので,この日にこの目的をどれだけ高水準で達成できるかが,今後を左右するという認識のもと,大人たちでみっちり議論して準備してきました。

 

最初から良い感じだけど,まだ少し固い雰囲気

 

午前中の最初は予め入力してもらった自己紹介情報を名刺サイズに印刷し,それらを使いながら自己紹介〜他己紹介をじっくりやったりとアイスブレイクの時間をたっぷり取りました。その後,僕の方から「VUCA時代に求められる力と今回のプログラムで成長するために」と題したウェルカムレクチャーと,プログラム責任者の横山先生@商学部・地域連携センター長からソーシャル・アントレプレナーシップに関するミニ講義とワークを行いました。

 

僕からのウェルカムレクチャー。みんな真剣な表情。

 

午後はゆっくり昼食休憩を取りましたが,その間にも会場に来てくれた企業の人や教職員に質問に来る学生たちと交流している光景がたくさんありました。

 

Work Design Lab代表理事の石川さんとがっつり話し込む学生たち

今回のプログラムの実質的なリーダーを務める職員の山中さんと学生たち

 

我々関係者も,何度かZoomで顔を合わせたり,Slackでは常にやり取りをしてきましたが,直接会うのは初めての方も多かったので,会うなりテンションが上がりました。偶然の縁で当日来られた株式会社アンド代表取締役の小野さんとは,8年前に中高の教員向けのアクティブラーニングの講座を一緒にやったことがあったのですが,最初隣りに座っていたのに気づかず,名刺交換する際に顔を見た瞬間,「えー小野さんやん!」「え,山田先生!?」「なんでここにいるの?(お互い)」ってなって(笑),そういう出会いもまた楽しいですね。

 

学生たちもですが,僕にとっても普段一緒に仕事することがあまりない企業の方々と一緒に人材育成プログラムを実施できるのはとても刺激的で楽しみでもあります。

 

大人たちも大いに交流を楽しんでいます

 

今回のプログラムは外的プログラムと内的プログラムの2つのプログラムで構成されています。外的プログラムは,実際に関大と縁のある4箇所の地域拠点をフィールドに,そこにある地域課題(課題オーナーから提示される課題)の解決に向けて,まさに学外に出て活動を行い,解決方法や新たなアイデアを創出するものになっています。内的プログラムは,「マイプロジェクト(通称マイプロ)」と呼ばれる実践を核として,複数のホワイト企業の社長さんへのインタビューを行い,そこからその方のマイプロを,ひいては自身のマイプロを創り上げていくというものになっています。

 

なので,午後は外的と内的で別の部屋に分かれて,そこで希望に基づいたグループ編成で,それぞれの活動に入っていきます。外的では関大の卒業生らが設立した一般社団法人KANDEとWork Design Labが,内的ではIIKIGAI Worksが担当してくれていて,我々関大の協力教員がメンターとして加わります。僕は内的の方に特に関わることになっています。初めて学生たちがマイプロを創るプロセスに関わりましたが,とても良いツールですね。授業でも取り入れてみようかなと思います。

 

内的プログラムの一コマ。チーム名や役割を決めて動きます。

 

外的・内的それぞれ3時間ほどワーク等を行った後,全体で集まって今日の学びの振り返り。しっかり振り返りを共有して,最後にみんなで写真撮影をして終了!学生のみんなもさすがにヘトヘトな様子も見受けられましたが,そりゃあそうですよね。知らない学生たちと一緒に色んな話を聞いたりワークをしたり自己開示をしたりなので,気疲れもあったと思います。

 

その後,次の全体会(9月にある中間発表会)のミーティングを終えて,いよいよ大人の時間。この日のために忙しい中,各所から足を運んでくれたみんなとの待望の懇親会。いやー楽しかった。異種混合って本当に面白いですね。

 

大いに盛り上がった関係者の懇親会

 

今回のプログラムは,三菱みらい財団の助成事業に応募して採択されたものなのですが,そこで記載しているコンセプトが「ごちゃまぜ協働」なのです。それは,学校と地域社会,学部や学年が異なる学生同士,学生と大人,企業人と大学人など色んな「ごちゃまぜ協働」によってソーシャルアントレ人材育成をやろう!というものになっています。その名にふさわしいスタートが切れたのではないかと感じています。

 

今から4ヶ月後の成長を見るのが楽しみです。

2023夏の予定

8月に入り,授業も終わり(採点はあるけど),会議等本務のウェイトが大きく下がる中,研究活動・学外活動が本格的に始まります。頭の中がごちゃごちゃなので,自分のためにも整理しておこうと思います。

 

<8月上旬>

8月上旬の目玉はなんといっても「関大ソーシャル・アントレPG(通称,アボカドPG)」のキックオフイベント(8月8日@関大梅田キャンパス)です。

いよいよ,当該プログラムがキックオフを迎えます。最終,定員を超える「50名(外的28名,内的22名)」の学生が申し込んでくれました。1年生から大学院生まで,ほぼ全ての学部からエントリーがあり,また,受講動機などを見てもみんな意欲的で,みんなに会えるのが楽しみです。

僕はこの日のプログラムの統括や効果検証チームのリーダーを務めていることもあり,この一週間はかなり慌ただしかったですが,後は何とかなるかということで,存分にテンション上げていこうと思います。

台風が怪しいので,無事開催できることを祈っています!

(あとは,授業の採点・成績評価,認証評価のお仕事,国のアントレPG関係など)

 

<8月中旬>

お盆かつ大学の一斉休業期間でもあり,協会の役員会や学会の理事会以外の要務は入っていません。ここが最も大事な研究活動期間になります。

絶対やらなきゃいけないのは,今年度最後の代表科研の調査設計です。ここであらかた仕上げて,倫理審査等を経てインターネットリサーチ会社と調整して秋学期の実査へと至る予定です。

後は,学会発表の資料作成や論文執筆,査読(3本)を捌きます。

 

<8月下旬>

ここから学会出張や講演・研修等のイベント系が続きます。

1.高等教育質保証学会第12回大会(8月26日・27日@福島大学

 評議員を務めていることもあるし,第4期認証評価に関して,1年目に受診する本学の関係者という意味でも大学基準協会の委員としても深く関わるところなので,福島まで飛びます。

 

2.日本アカデミック・アドバイジング協会第3回年次大会(8月26日@オンライン)

 副会長を務めていることもあるし,自由研究発表も申し込んでいるので,上記とバッティングしていますが,こういう時代なので助かりました。以下のタイトルで発表を予定しています。共同研究者のみんなと時間をかけて分析を進めていて,なかなか興味深い結果が出てきています。実行委員のメンバーが一生懸命作っている年次大会で,メインの企画セッションを含め魅力的なプログラムになっていると思います。ぜひ,ご参加を!

 

「Student Successをどのように捉え,どのように関与するか―学習支援専門職員へのフォーカスグループインタビューを通じた探索的検討―」

◯山田剛史(関西大学),木原宏子(立命館大学),深谷麻未(立命館大学),茅根未央(東洋大学),渡邉あい子(立命館大学),岸岡奈津子(立命館大学 

 

3.関西大学プレFDプログラム(8月28日@関大図書館ワークショップエリア)

本学で採択されているJST事業「豊富な産学連携・地域連携と連動させた「考動力」人材育成プロジェクト」の一環で,昨年度から大学院生を対象としたプレFDを開始しました。うちの教育開発支援センターが全面的にバックアップ(というか企画から実施までほぼうちでやっている)しています。

僕はミニ講義や総合司会,グループファシリテーションなどを努めますが,今年度のミニ講義はオンデマンド化して事前視聴になったので,先程撮り終えました。

 

4.四條畷学園大学看護学部FD/SD研修・講師(8月29日@対面)

昨年12月にもお呼ばれしているので,2度目になります。タイトルは先方と相談して,「学生が主体的に学べる環境づくりPART2~学生の学力とモチベーションを上げる教職員ハンドブックを作ろう!~」としました。楽しみです。

 

5.NPO法人学生文化創造「学生支援相談に関する基礎研修講座」講師(8月31日@オンライン)

今回初めて知ったのですが,僕は「教職協働による修学支援の充実〜教員と職員が連携して教育効果を高めるために〜」と題した講演を行います。一昨日,うちの教学IRプロジェクトの教職員にミニインタビューを行ったので,それも当日披露する予定です。

 

<9月上旬>

9月も学会等のイベントが続きます。

1.第2回こみゅREば(9月3日@関大梅田キャンパス)

学生プラットフォームのユニットMOCAの学生企画のイベントです。僕は鍵開けとガヤ担当です。関大のOBOG1年目の人と在学生とが一緒に将来のことなど話し合うといった企画です。もし興味ある関大生がいたらぜひ声かけて下さい。担当に繋ぎます。

 

2.初年次教育学会第16回大会(9月6日,7日・8日@山梨学院大学

大会自体は7日・8日の2日間ですが,前日は理事会があるので,6日から山梨入りです。今年度の選挙で理事プラス事務局長を拝命したので,正直かなり慌ただしいです。無事に理事会・総会を終えられますように・・・大会のプログラム上は課題研究活動委員会企画シンポジウムの指定討論を努めます。

 

<9月中旬>

ここも学会等のイベント系です。

1.文科省知識集約事業採択プログラム外部評価&シンポジウム(9月15日@新潟大学

当該プログラムのプログラムオフィサー(PO)という任に就いている関係で,採択当時から伴走支援者として携わっています。今回は午前中の外部評価委員会の大学側のサポーターとパネルディスカッションに登壇します。

シンポジウム開始直前に本務校の重要な会議で報告しないといけないので,新潟大学からZoomを繋ぎます。

 

2.日本心理学会第87回大会(9月15日〜17日@神戸国際会議場・展示場)

初日は新潟なので参加できませんが,今回の選挙で理事を拝命したこともあるので,2日目・3日目は参加しようと思っています。

 

3.アボカドPG中間発表会(9月19日@関大図書館ワークショップエリア)

8月8日のキックオフから外的・内的テーマに分かれて,その中でグループを編成し,活動を進めていきます。その中間発表会があります。どこまで仕上がってくるか楽しみです。

 

<9月下旬>

授業開始。日常に戻ります。

 

そんなこんなで,この夏もさしてゆとりはなく,一気に駆け抜けることになりそうです。会う人会う人,「夏休みはどうされるんですか?」と聞かれるのですが,こんな感じです。

中等部・高等部との連携

今日は朝一で,本学の中等部・高等部との連携等に関する意見交換のため,高槻ミューズキャンパスに行ってきました。

 

高槻ミューズキャンパスから見える景色

 

以前から,うちの教学IRプロジェクトと事務レベルでは何度かやり取りがあり,分析等を行っていたのですが,今回はもう少し踏み込んだ意見交換をということで,中等部・高等部の校長,各教頭先生らと2時間ほどみっちりお話をしました。

 

その背景として,本学には幼稚園から大学まで全ての学校種があり,今年度は小学校から入学した子が大学を卒業する最初の年度になるということがあります。6歳で小学校に入学して22歳に大学を卒業するまでの16年間を関大で過ごした,換言すれば相当規模の学費を納めてくれた子たちになります。

 

初頭から高等まで本学で教育を受けてきた子たちがどのように学び成長してきたのかをきちんと効果検証して,学内外に示していくことが重要ではないか。これは学園としての使命でもあると考えます。

 

とは言え,お互いに知らないことも多いので,特に中等部・高等部でのアセスメントの現状や特徴的なカリキュラムなど伺いながら,連携の方策を探るという時間でした。

 

最近,公表したばかりのスクールポリシーなども共有しながら,とりわけ力を入れておられる「総合的な探究の時間」や「考える科」を始めとする探究学習カリキュラムについて詳細を伺いました。

 

スクールポリシー|関西大学高等部

探究学習|関西大学高等部

6年一貫教育|関西大学中等部

 

中等部1年から高等部3年まで6年間を通して行われる探究学習(プロジェクト学習)はなかなかに気合の入ったものでした。グループでの探究やポスター制作・発表会などを経て,最終的には1人で10,000字程度の卒業論文を執筆するところまで行きます。

 

優れた発表や論文については,校内に掲示したり,図書館にコーナーを設けたりと,随所に生徒たちの活動の成果が展示されています。校長先生に各フロアを案内していただきました。

 

探究ポスター(高等部2年の中間報告)

 

各自で大学図書館に行って資料を集めたり,大学の実験施設で実験をしたりと,かなり本格的に取りんでいる生徒もおられるようです。正直,大学1年生のPBL授業よりクオリティが高いものも見受けられます。

 

情報の授業などで使用する部屋に入るとiMacが壁一面に配置されていたり,各教室等には大画面のモニターにApple TVが接続されていたり,生徒は基本1人1台Mac BookやiPadを持っていたりと,開設当初からここまでApple製品で統一しているのはすごいなと。

 

学びの充実を図るための図書館との連携もしっかり取られていて,随所に工夫が凝らされていました。そして,図書館にはディズニーコーナーが!何気に40周年を祝う掲示もあり,素敵な空間でした♪

 

図書館の中に作られたディズニーコーナー(特設)

 

そんなこんなで教学IRとしての学園連携プロジェクトも進めつつ,十分に効果検証が出来ていないという探究カリキュラムのアセスメントや専門的な助言,さらには,先生方の実践の振り返りや意味づけ,啓発など,教員に対する研修・ワークショップの講師など色んなお願い事を承ることになった高槻ミューズの訪問でした。

発達「障害」という社会課題を考える

今日の午後は,筑波大学ダボットプロジェクトとオールマイノリティプロジェクト共催の公開Webイベント「発達障害の”障害”は,社会のどこにあるのか?」を視聴させてもらっています。

 

www.jst.go.jp

all-minorities.com

 

以前にも関連イベントに参加して勉強になったのもありますが,このタイトルにも意味があるなと惹かれて参加しました。従来ある「障害は当事者の中にある問題で,それをどう治療し,環境適応・社会復帰させるか」といったいわゆる医療モデル的な考え方を根本から問い直して,社会のどこにあるのか,といったいわゆる社会モデルを前提として出発していること。さらに,その社会モデルを「3つの社会」に分類し,その中核に「発生メカニズムの社会性」(障害を生み出すマジョリティ−マイノリティの権力関係)であることが指摘されています。

 

第1部の大島郁葉先生@千葉大学の基調講演では,自閉スペクトラム症ASD)を中心に,様々な研究成果を取り上げながら,ASDにおける障害が社会のどこにあるのかに対して,特に「社会的スティグマ」や「マイクロアグレッション」の観点から言及されました。

 

社会的スティグマ(個人のもつ属性によって差別や偏見の対象になること)について,マジョリティによる「『普通』はこうするよ?」という社会的スティグマは,マイノリティに「自分は人並み以下だ」という自己スティグマを引き起こす。

 

加えて,マジョリティ(定型発達)による日常的なマイクロアグレッション(相手の意図の有無に関わらない,敵意のある否定的な表現)がマイノリティ(発達障害)に浴びせられる。発達障害に対するマイクロアグレッションの例には,「発達障害なのにすごいね」「発達障害に見えないね,普通に見えるね」「みんなに苦手なものはあるよ,我慢すればなんとかなる」などが挙げられる。

 

こうした社会的スティグマやマイクロアグレッションが日常的に積み重ねられることによって,自己スティグマが強固になったり,「社会的カモフラージュ」(自閉症者が定型発達者に馴染むように自分の行動を修正する努力)を取るようになる。社会的カモフラージュには,補償(非ASD者のふるまいを学び,まねる),マスキング(ASDの特徴を出さないようにする),同化(非ASD者に合わせた価値観をもつフリをする)の3つの要素があり,とりわけ同化が大きな問題であることが指摘された。

 

社会的カモフラージュは,不安の高さや抑うつ状態,バーンアウト希死念慮,対人関係の不信感といったメンタルヘルスにも良くない影響を及ぼすことも各種研究より示されている。

 

講演後半にはASDに対する介入研究の結果など詳細が紹介され,Take Home Message「様々な人が共存できる社会に!」として以下3つが伝えられました。

 

  • ASD者はマイノリティ属性から,様々なマイクロアグレッションを受けやすく,孤立化しやすい。
  • 社会的介入:支援者の持つスティグマやマイクロアグレッションの可視化と周囲の人のマイクロアグレッションのコントロールが必要。
  • 個人的介入:ASDの特性を自己理解すること・周囲にも理解してもらうことで,本人に合う合理的配慮を受けること。

 

私自身は,高等教育機関で教育開発・支援を中心の任務としつつ,そのコアには,一人ひとりの学生の「Student Success」を据えています。これは佐々木先生@筑波大学の掲げる「SuccessAbility」と同じコンセプトだと認識しています。直接,学生支援に携わっているわけではありませんが,全ての教職員がこれらの知識や理解をもって,学生と向き合い・関わることが絶対に必要だと思います。

 

もっと言えば,学校教育という空間自体は,マジョリティ−マイノリティの権力構造を容易に生み出してしまいます。その意味では,高等教育からでは到底遅く,もっと早期からこうした理解を促す教育を推進していく必要があると強く感じます。同時に,日本は,特に学校段階が上がるにつれて障害児・学生支援が低調になってくるといったことを専門の方から聞いたこともあります。高等教育機関でも合理的配慮が入って数年経ちますが,本当に全ての教職員に浸透しているか,十分な包括的支援策(組織体制や制度,ルール,FD・SD等)が講じられているか,日常的な教育・学生指導等の中で実践されているかというと,正直Yesとは言い難いように感じます。

 

正直,学生たちの同調圧力の強さにも驚かされます。障害の有無に関わらず,自分がマイノリティに入ることを恐れ,マジョリティにいるかどうかを常にモニターして意識や行動調整をしています。その意味では,学生中に社会的カモフラージュが蔓延していて,障害学生もその中に隠れようとするので,なかなか十分な関与が出来ずにもどかしさを感じています。

 

時間はかかりますが,教育を通じて,体系的・組織的に取り組んでいくべき重要な社会課題だと思います。

 

今回のイベントでは「障害」に焦点を当てられていますが,多様性が叫ばれる現代社会で,障害の有無に関わらず,一人ひとりがどうウェルビーイングを感じながら生きていくのかといった本質的な問題に関わっていると思います。

 

まだパネルディスカッション中ですが,ここまでだけでも考えさせられることが多くて,1回ポストしてしまおうと思います。

 

貴重な機会をありがとうございました!

自分にできること,頑張っていこうと思います!

発表会ラッシュを終えて〜もっとアウトプットの経験を〜

春学期の授業も終盤に入り,10日の週(第14週目)は成果発表会ラッシュでした。

 

12日(水)の「プロジェクト学習1(学生生活をデザインする)」(1年生対象)では,前半部(第1回〜第7回)の講義や演習を踏まえて,広く大学や大学生に関わるテーマを設定して,探究活動を行い,発表を行いました。

 

 

自分たちでテーマを決めて,学生に対するアンケートやインタビューをしたり,生協の職員等にインタビューをしたり,独自のHPを作成したり,過去の偉人の思想と楽単志向とを重ねてみたりと,チャレンジングな取り組みが多々見られました。

 

13日(木)の2コマ目は,教職科目「カリキュラム開発論」(3・4年生対象)の探究活動です。準備期間は3週間程度と短いですが,高等学校での探究カリキュラムをデザインするというお題で,3つのテーマ「職業・キャリア」「環境問題」「情報・メディア」から好きなテーマを選んで,グループを編成してというものです。全部で10グループあって,1グループずつ発表する時間はないので,ポスター発表会形式にしています。

 

 

90分という限られた時間の中で,10グループ,異なる3種類のテーマでのポスター発表をうまくハンドリングするのはなかなか骨が折れます。何より学部も学年も異なる学生たちがグループ作って数回の授業で1つの物を作り上げるというのはとても苦労します。そのためにも,毎回の授業で違うメンバーでグループを編成して,毎回必ずディスカッション等を行う時間を設けて,クラス全体の心理的安全性を確保するよう努めています。その積み重ねによって,短時間でのパフォーマンスを引き上げることに繋がります。もちろん,それでも学生のモチベーションは多様なので,苦戦を強いられることも少なくないのですが。

 

13日(木)の3コマ目は,「サービスラーニング吹田市の課題を解決する)」(3・4年生対象)の成果発表会です。毎年,吹田市の2部署から「お題」をもらって,学生たちはその解決策を検討し,新しいアイデアを創出します。最終的には,吹田市の施設にて市の職員らを相手にプレゼンテーションを行います。

 

今年度は「男女共同参画センター」と「シティプロモーション推進室」の2部署が手を上げてくれて,最終29名の学生が6つのチームに分かれて活動を行ってきました。今年度は,第1回目にしっかりアイスブレイクを行ったり,フィールドワーク(第3回・第4回)の後にも,リーダーシップに関する講義やチームビルディングのワークなどの時間をしっかり取ってから,チーム活動に入るようにしました。また,今年度は中間発表会にも吹田市の方々にも参加してもらうようにして,集中力やモチベーションが下がらないよう工夫しました。吹田市の負担も鑑みて,Zoomで参加していただくようにしました。また,全体で6チームと多いので,テーマ別に3チームずつ2部屋に分かれた上で,部屋同士もZoomで繋ぎつつ,吹田市とも繋いでメインルーム(全体説明)とブレイクアウト(各テーマの中間発表・質疑)を駆使して行うという複雑な形でしたが,うまくいってよかったです。コロナ前なら考えられない設計ですね。

 

中間発表会の様子(男女共同参画センターの部屋)

 

中間発表会での各部署からのコメントも踏まえて,学生たちは準備を進め,最終発表会に臨みました。発表会はメイシアター吹田市文化会館)で行いました。やはり6チームは多いので,展示室とリハーサル室の2部屋を借りて,それぞれ3チームずつに分かれて行うという形にしました。中間発表もそうですが,なにせ教員は私1人なので(身体1つしかないので),どうしても行き届かない部分が出てしまうのですが,90分でやりきらないといけないので,しょうがないところです。2コマぶち抜きにしたいけど,学部も学年も違う学生たちなので,全員が2コマ連続空いている状態はほぼ不可能なのです。

 

最終発表会(シティプロモーション推進室の会場)

最終発表会(男女共同参画センターの会場)

発表会の前の週,学生たちに「服装は自由でいいけど,市の職員さんを相手にプレゼンをするので,清潔感は意識してね」とだけ伝えていたのですが,結果,全員白を基調とした服を着てきていてビックリしました。「全員で相談したの?」と聞くと,グループの中では相談しましたが…という返事で,そうか,みんなの気持ちがシンクロするくらいの雰囲気が出来上がっていたのかなと嬉しく感じました。

 

各チームのプレゼンもとても良かったです。内容も良かったですが,一人ひとりの学生が市の方々に一生懸命準備してきた提案を伝えたいという想いがひしひしと感じられて,それが堪らなく嬉しかったです。市の職員さんらもとても感激してくれて,温かいコメントをたくさんいただきました。そんなあったかい雰囲気の中で発表会が進んでいきました。最後のあいさつの時,僕は不覚にも思いが込み上げてきて泣きそうになってしまい(いや,泣いてたな),声が震えてしまいました。だって,市の職員(大人)から渡された課題(バトン)を学生たち(若者)が受け取り,真剣に取り組んで,プレゼンを通してたくさんのアイデアを思いを込めて伝える。大人と若者,社会と学校とが繋がる瞬間。そら感動するでしょ。こうした積み重ねが大人と若者との信頼関係を築き,それが個人と社会のウェルビーイングを高める,そんな風にすら思います。

 

また,今回僕にとっても有意義だったのは,シティプロモーション推進室のサポーターとして,3名のインフルエンサーの方々(森さん@moriyahana,みりんさん@mirin_mi123,まさしさん@masashi_00_)が加わってくれたことです。様々なソーシャルメディアを駆使しながら,自分たちの強みを押し出していく。そうした人たちが繋がり,周りを巻き込みながら,世の中を元気にしていく。そんな活動を推進している方々に加わっていただき,随所に学生たちにコメントやアドバイスをしてくれました。森さん,みりんさんは最終発表会にも来てくれて,場を盛り上げてくれました。僕自身もとても良い刺激をもらいました。この場を借りて御礼申し上げます。

 

そんな感じで性質の異なる3つの授業の発表会を無事に終えて,来週は最終回。フィードバックと振り返りの週です。これもとっても大切。ルーブリック等を集約して学生たちにフィードバックします。同じグループ・チームの中での振り返り,ジグソーで別のメンバーたちとの振り返り,再度戻って振り返りと重層的に行います。最後は一人ひとりのスピーチで授業全体を,そしてこれからを語ってもらいます。

 

学部も学年も違う一週間に一度しか会わないクラスメイトですが,その後も続くような関係性を築けることが,僕にとっての裏の努力目標です。到達目標とか表の目標もありますが,正直その実現だけでいいのならそう困難ではありません。裏まで行けるかが僕のチャレンジです。

 

最後に,大学教育に対してどうしても言いたい。学生にもっとアウトプットの経験をさせて欲しい。インプットが多すぎる。アウトプットといっても試験で知識を問うばかり。教員が主導権を持ちすぎ。学生を信じてもっと学びのオールを握らせて欲しい。

 

よろしくお願いします!

2つのアントレ人材育成プログラムにコミット

今年度に入って,2つのアントレプレナーシップ人材育成プログラムにコミットすることとなりました。

 

1.関西大学ソーシャル・アントレプレナーシッププログラム(SEJumCo)

1つは,本学の地域連携センターが主導して提供する新しいプログラムです。当センターの1人の若手職員の熱い想いから出発しました。この職員さんとは当方が担当している「サービスラーニング」科目や,学生ユニット「つよしずし」などで1年以上前から色々情報交換してきていました。年度の変わり目に,「先生,三菱みらい育成財団にソーシャル・アントレプログラムで出したいんですけど,力貸してくれませんか!」と。二つ返事で「やりましょう!」と。

 

その職員さんと地域連携センター長の横山先生@商学部とを中心に申請書を取りまとめ,新プロジェクトが始まることに。今回のプログラムには,一般社団法人カンデ一般社団法人Work Design LabIKIGAI Works株式会社の3つの企業が参画しています。夏頃からプログラムを開始する計画なので,採択結果(6月末)を待ってからでは到底間に合わないので,4月中旬にはキックオフミーティングを行い,それ以降,Slackを使ってプログラムの検討やWebサイトなど広報・周知の準備を進めてきました。頼もしいメンバーで,みんなで「採択されなくてもやりましょう!」という気持ちで準備してきました。

 

アメンバーでのキックオフミーティング

結果,無事に採択通知(カテゴリー4「21世紀型教養教育プログラム」)が届き,事業期間最長の3年間の支援を得ることが出来ました。そして,Webサイトもローンチして,今週月曜(6/26)から募集開始しました。募集内容の詳細は以下のサイトをご覧ください。

 

採択結果 | 一般財団法人 三菱みらい育成財団

関西大学ソーシャル・アントレプレナーシップ プログラム

 

僕は,特にIKIGAIマイプロジェクト(内的世界の深耕)とプログラム全体の効果検証を担当します。また,両プログラムを繋ぐ場作り等を検討する企画実行委員会のリーダーを務めることになります。

 

アントレというと「起業」というイメージが強いですが,当該プログラムが推進するソーシャル・アントレプレナーシップは必ずしも「起業」を目指すものではなく,失敗を恐れず挑戦するマインドセットや社会参画意識を醸成するといったところに主眼を置いています。僕が参画を決めたのもそこにあります。起業家養成なら僕のテリトリー外だし,関大でも他にプログラム(HACK-Academyとか)がありますし。

 

僕自身,ずっと大学教職員(や中高教員)を相手に仕事をしてきていて,もちろんそれはメインワークであることは変わりないのですが,なんというか,学校という閉じた空間の外に出て,やる気のある社会人と繋がったり,そこに意欲のある学生を巻き込んで一緒に新しい時代・社会を創っていくことにエネルギーを注いだ方が楽しいし,生産的じゃないかと感じるようになってきています。そういう意識の変化もあって,今回のプログラムにジョインしました。

 

現在,参加学生募集中ですので,ぜひ興味のありそうな関大生がいたらお声がけいただければ幸いです。

 

2.文部科学省全国アントレプレナーシップ人材育成プログラム

と,そんなことを進めている中で,もう1つアントレに関するお仕事が舞い込んできます。これは,文部科学省が進めている令和4年度科学技術人材養成等委託事業「全国アントレプレナーシップ人材育成プログラム」(〜令和8年度)になります。

 

全国アントレプレナーシップ人材育成プログラム

 

有限責任監査法人トーマツが受託し,運営している全国的なアントレプログラムですが,僕は当該プログラムの「教育効果の測定指標具体化ワーキンググループ」の委員を務めることとなりました。

 

このプログラムも,先と同様,起業家を排出する(いわゆるスタートアップ系)というより,その土壌を耕すことを主眼に置いています。メインターゲットは大学生ですが,現在,アントレ教育は初等中等教育でも重視されていて,総じて社会参画への意識を高め,社会課題の解決という問題への関心意欲を高め,そのために必要な資質能力を育む必要性(危機感)が背景にあるのだと理解します。

 

 

こんな感じで,今まで直接的には関わってきたことのないテーマに携わることになりましたが,楽しみながらやれればと思います。当該プログラムの実践事例や効果検証については,学会等でも発表していければと考えています。こうしたテーマに関心のある方がおられましたら,ぜひ交流・意見交換等させてもらえれば嬉しいです。

今期から5つの学会役員に

今日最後の学会役員の決定に係る総会が終わり,正式に今期からの学会役員のお務めが揃いました。

 

結果的に,以下の5つの学会(協会1つ含む)での役員を仰せつかることとなりました。

 

  1. 高等教育質保証学会 評議員(継続)
    学会紹介|高等教育質保証学会
  2. 日本アカデミック・アドバイジング協会 副会長(継続)

    組織と事業内容 | 協会について | JAAA 日本アカデミック・アドバイジング協会

  3. 初年次教育学会 理事(再選)・事務局長(新)

    役員等名簿 – 初年次教育学会(JAFYE)

  4. 大学教育学会 代議員(再選)・理事(新)

    役員組織 - 大学教育学会 | Japan Association for College and University Education

  5. 日本心理学会 代議員(新)・理事(新)

    役員・代議員名簿 | 日本心理学会

    (役員名簿は,未更新)

 

なんだかんだで増えてしまいました。日本心理学会は会員8000名弱の最も古く権威ある心理系最大の学会だし,初年次教育学会は事務局長も拝命したので,うまく立ち回れるか自信がありませんが,勉強しながら可能な限り尽力できればと思います。

学生の楽単志向の謎に迫る

以前から学生の楽単志向については考えてきました。ベネッセ教育総研の大学生調査で2008年からずっと聞いてきている項目があるのですが,所謂「楽単志向」の学生は調査を経るごとに増えてきています(下図)。プレスリリースなどでもよく取り上げられてきた結果の1つで,研究メンバーでもその原因など分析・検討してきています。

 

ベネッセ教育総研「全国大学生調査」より

 

学生の目的意識の希薄化や動機づけの低さ,学生の生徒化,アクティブラーニングの形式的対応による失敗など,色んな分析・考察もしてきましたが,いまいちしっくり来ない,というか本質的な理解に至っていない,そんな気がしていました。

 

先週,3・4回生の専門科目の授業でこのデータも見せつつ,大学生の学びについて振り返る時間を設けました。まず,学生らに上記A・Bどちらの考えに近いかを聞いてみると,9対1でした。つまり9割が楽単志向だったのです。毎週の振り返り,みんな結構書いてきてくれるし,こう言うと申し訳ないけど学内を歩いているチャラついた学生たちよりよっぽど真面目な学生たちと認識していただけに,かなり驚きました。

 

その日の振り返りでは,学生たちからこのことについての感想・コメントが多数寄せられました。それを見て,だいぶこの問題の抱える本質に近づけた気がします。全てではありませんが,少し紹介してみようと思います。

 

1.一般的な楽単志向の捉え方

  • 周りの友人や学生と話をしている限りでは、いわゆる楽単と呼ばれる授業が好まれているのも事実です。学ぶことより卒業することに重点を置いている学生が多いのかもしれません。
  • 僕も結構楽単だと聞いた科目を選択しがちで、興味があるものを学びにいくというより大学を卒業することが目的になっているような気がした。
  •  私の意見としては、興味があっても単位が取れなければ意味がないと思います。それなら、興味がなくても楽単をとって、その時間を興味のある勉強や趣味など他のことに回す方が効率がいいと思っていました。
  • 学校で学ぶことより学校外での活動や何かしらをする経験で学ぶことを大切にしているので履修する時は楽単を選びます。
  • 1回生のころ、自分が興味を持った授業を登録したものの成績が振るわず危うく奨学金止まりかけた経験があるので今でも楽単重視の登録になっています。

確かに,こういう印象は見ていても伝わってくるので,理解できるところです。確かに,奨学金とかの観点も大事ですね。GPAは就活とかでも効いてくる(年々そういう傾向にある)ので,そういうのも楽単に向く原因になっていますね。しかも,本学の場合,GPAの「上書き制度」がないので,一度低い評価が付いてしまうと,取り消せないんですよね。やるべきだと以前から主張しているのですが。

 

2.教育者側(教員側)の問題

  • 私も友達も楽単を選ぶことが多いです。興味のある授業は成績評価が難しそうだったり、先生が怖いと感じたりするからです。
  • 楽単志向について、単位を取るのが難しくても興味がある分野を学ぶのが1番という事は分かっているけど、興味がある授業でも、履修してみたら先生がずっと喋ってるだけだったり、オンライン授業だった時のオンデマンド授業で資料を載せるだけの授業があったりで、ただ内容が難しくて単位を取るのが難しいだけでなく、思っていたのと違うとなる場合がありました。どうせ思っていたのと違うとなるなら楽に単位が取れる方がいいと思ってしまった部分があると思います。
  • 1回生の頃は一般教養でも興味のある授業を履修していました。「○○○○」という名前の授業で、もともと海外ボランティアに興味のあった私にとって大変魅力的でした。また、1回生の頃は一般教養もほぼオンライン授業だったのですが、この授業は対面で行われていたこと・ちょうど空きコマだったということもあり、大学生になりたてで友だちが欲しく、空きコマを埋めたかった私はワクワクした気持ちでこの授業へと向かいました。しかし、初回の授業で待ち受けていたのは先生の厳しい言葉でした。「この授業はテストが7割で、真面目に勉強しないと単位を与えない。空きコマだからという軽い気持ちでこの授業に参加している人は申し訳ないが履修辞退してくれ。」とはっきり告げられたことを今でも覚えています。・・・他の授業でテストなし、レポートのみというものを経験してしまうと、一つのテストのためにここまで時間をかけなくていいのかという魅力を感じてしまい、それ以降テストなしの授業ばかり選んでいます。
  • 楽な単位を選ぶか、難しいけど自分の興味のある単位を選ぶか以前に、興味のある授業をシラバスで見つけるのが難しい。・・・確かに楽単かどうかを判断するのはシラバスで授業の課題量や、最終成績評価がレポートかテストのどっちかを調べて自分の得意な方であれば判断しやすいです。しかし興味のある授業かどうかを判断するのはシラバスや初回のイントロダクションの授業だけでは難しいです。実際シラバスに書いてある授業内容を読んでみて興味のありそうな内容だったから初回のイントロダクションに行ったら「なんか思ってた内容と違う」と言った経験もあるし、逆に授業名やシラバスの授業内容から自分には絶対合ってないと敬遠してたけど、友達が受けるから一緒に履修登録して受けてみたら意外と自分に合ってたみたいなこともあるので判断が難しいです。ましてや興味があるかどうかわからないのに加えて授業内容が難しいとなれば、単位を落としてしまうかもしれないという不安もあるので、結局は安定択として楽単を選んでしまうのだと考えます。
  • 私が考えるに、面倒臭い授業があまりにも面倒くさ過ぎる事が理由だと思います。どういう事かと言うと、ただ単に文字が大量に書いてあるだけの資料を読み上げる授業を行い、最後8000字のレポートを書かせる授業があったとします。仮にシラバスを読んで興味を持った授業だとしても、もはやこの授業を楽しく学ぶことは不可能だと思います。それだけで無くこの様な授業を選択することで落単の危機にも陥ることになります。そうなれば多少の希望を持った真面目な学生もアホらしくなって来ると思います。結果的に学生は楽単の情報を得ることに精を出す様に変容していきます。「大学は教えられるだけじゃ無くて、自ら学びを深める所だ!」と仰る教授も多くいますが、それにしても限度はあると思います。本当に文字を読み上げているだけの教授もいるので、そういったとこから何を学べば良いのだろうと感じます。

これらの率直な感想・コメントにとてもリアリティを感じました。同時に楽単志向という現象の背後にある重要な問題に踏み込めた気がします。つまり,学生たちは1で取り上げたような「やる気の低い学生たち」だけではなく,学ぶことに対して期待を抱いていたり,学ぼうという意志を持っている学生たちもたくさんいるということです。上記では,授業内容の問題(思っていた内容と違うなど),教育方法の問題(ただ読み上げる,一方通行,資料だけ載せるなど),評価方法の問題(いたずらに課題が多い,極端に評価が厳しいなど)が強調されていました。また,シラバスや初回オリエンテーションだけでは判断しづらいという問題も重要な指摘かと思います。日本のシラバスは内容が薄く,それだけで15回の授業にBETするのはリスクが大きいと思われているのです。

 

3.学生を取り巻く環境要因

  • 私が1年生の時、新入生歓迎オリエンテーションに行った際に、同じ学部の先輩方から「この授業はめっちゃ楽単!」「この先生の授業は評価が緩いから取った方がいいよ」などなど、面白くてオススメの授業を紹介するのではなく、いかに単位が取りやすい授業ばかり紹介されました。このような文化は、今までもこれからもずっと続いていると思います。辛い受験勉強を乗り越えて、やっとの思いで憧れの大学に入学することができて、ほとんどの人が意欲を持った状態で大学に来た(そう信じたいです)瞬間、楽な方法があるよという話を聞き、どれだけ難しくても自分のしたい勉強を頑張るorとりあえず単位を取るために楽な授業を履修するという葛藤に苛まれると思います。

少し異なる切り口として,このような声もあります。これは本学では実際よく聞く話です。もちろん,そんな先輩の言うことなんか気にせず,自分がやりたきゃやればいい,という気持ちもありますが,それよりまずこういう悪しき伝統,悪しき文化がはびこっていること自体どうにかしないといけないなと思います。また,たとえそういう悪魔の囁きがあったとしても,新入生のオリエンテーションや初年次の教育でガツンと,「これが大学の授業だ!」って見せられれば一蹴できるかもしれません。

 

一言でまとめれば,学生の楽単志向は日本の学校教育(教員)の問題と表裏一体の関係にある,ということです。

 

書いてて,これは論文かせめて学会発表くらいしようかなと思いました。あと,やっぱり学生の生の声はほんといっぱい聞かないといけないなと痛感しました。僕自身は通常の教員よりも専門性という意味でも学生のことはよく見ているつもりですが,それでも分からないことが多いなと感じます。特に,私学に来て,国立とは違う学生のカルチャーには付いていくのが大変です。

 

もっともっと学生理解を深めていくために,彼らの声に耳を傾けていきたいと思うし,その背後にある教育の構造的問題の転換にも注力しないといけないなと思いました。

 

みなさまはどのように感じられたでしょうか?

色んな学生と出会えるね

日常に戻りつつあることもあり,学生たちの動きが活発になってきてますね。

 

授業をきっかけに色んな学生との出会いがあります。

 

この一週間でも,授業後に勇気を出して声をかけてくれた学生たち(1年生3人)と一緒にお昼ごはんを食べたり,インターンシップの採用面接を見て欲しいと癖強な学生とじっくり話したり,彼女から別れを告げられてどうしたら良いか相談に乗って欲しいと懇願する学生に対応したりと慌ただしいです。

 

今日のサービスラーニングの授業後には,落語とよさこいをやる千葉県浦安出身!で国際寮に入って寮生リーダーをやっているアクティブな学生から,国際寮での「こども食堂」の取組を広く紹介して欲しい!と熱弁されたり(以下,紹介記事)。

 

学生会館ドーミー初の試み「こども食堂」を関西大学提携国際学生寮「KU I-House」で開催! | ドーミーラボ

 

また,同授業後には別の学生と話していて,昨年秋学期に大学を休学していたと。で,何してたかというと,アルバイト(調理+SNS担当)していた“あんかけパスタ(名古屋グルメだとか)”のお店が閉店になるも,その味が忘れられず,また,ファンも多いということで,そのレシピを引っ提げて,あんかけパスタを食べてもらうイベントを企画する,そのためにアルバイトで資金を貯める,そのために休学をしたという。一人でイベント会場を借りて,twitter(@ansupatengoku)等で広報やって,メニュー考えて,仕入れして,仕込みして,当日は調理してって。当日だけは友人のヘルプもあるみたいだけど,それでもそこまで一人でやるってすごい!次イベントやる時は絶対食べに行く。

 

大学は色んなことに挑戦できる場所だし,そのために与えられた貴重な時間。学びももちろん大事だけど,それにこだわらず色んなことに挑戦して欲しい。とは言え,就職のために何やったら良いですか?と,自分のこだわりというより,どうすれば就職できるかといった意識に囚われていて,よくも分からず資格を取ったり就職セミナーに出まくったりしている学生も少なくない。とてももったいないけど,それも現実。

 

貴重な大学生活,自分だけの有意義な時間にして欲しいと心から願う。

タイトルはnozawa

何かあちこちでちょっとした街フェス的なものに参加してて。

 

見ず知らずの男性だったけど、何か声かけられて、誘われるがままゴルフのミニイベントに並んでて。何か飛距離を競う的な?


僕「いや、ゴルフやったことなくて…」

とある男「いや、簡単ですから一緒にやりましょう!」って。


で、順番が来て、まぁ、せっかくだしって思っていよいよ覚悟して移動したら


スタッフ「あと10分で終了です」って。


まぁでもとりあえず打つくらいは出来るよね、って思ったら。


とある男「あー、残念。別のとこ行きましょう!」って言われて、その場を離れることに。


打てたのになー、って。


そこから何故か電車に乗って降りた駅は、桜ノ宮駅天満駅


僕「あ、ここ天満駅ですね」

とある男「桜ノ宮ですよ」


そぅかなぁ、天満っぽいんやけどなぁって思いながらタクシーに。細い道を飛ばすタクシー。


誰も道を遮るものもないのに、何かクラクション鳴らして「あー、くそっ!」とか言ってて、ちょっと怖かった。


タクシー降りる時、僕「あんまり現金持ってなくて、カードで払いますね」と。何か自分が出してるなぁって。


現地に着いたら、小さな野外音楽堂みたいな場所。屋根があって、スクエアな会場で、階段状になってて。


そこで、誰がステージに上がるでもなく、ちょっとしたカラオケ大会みたいな感じ。


カラオケボックスにある選曲する機械をみんな手を挙げて取って、選曲して、その場で立って歌う。階段状の席にパラパラといるお客さん?たちは割と楽しそう。それでも30~40人くらいいたかなぁ。


とある男「あなたもどうぞ!」と機械を持ってきてくれた。別にいいのになー、って思ったけど、周りの人たちも、お、あの人何歌うのかなーって感じで見てるので、とりあえず選ぼうかなと。


僕はChicagoのHard to say I'm sorryを選曲。いや、実際結構得意な曲なんですけどね。

 

でも、なんか、機械に1文字ずつ入力しないといけなくて、すごいアナログな感じで。あー、くそ、タイトル長いのにしてしまった…って思いつつ。Iの後のアポストロフィがなかなかうまく入力出来なくて。みんなからの早く入れないかなぁという空気感に焦りながらも何とか入力。


あんまり歌いたいわけでは無かったけど、とある男もすごい楽しそうやし、まぁとりあえず歌うか、と思って、マイクを持って、立ち上がって、大きなモニターに映し出された文字が、

 


「nozawa」

 


え?


yazawaではなく、nozawa?


タイトル?アーティスト?


周りの人たちも、え?nozawaって何やろ?みたいな興味津々な雰囲気。


いや、これは違って、、って機械を欲しそうにこっちを見る人を気にしながら、もう1回必死で入力。


画面に出てきたのは、

 


「nozawa」

 


え、知らん知らん。。怖い怖い。


って慌てふためいて起床。

 


朝6時30分。3時間しか寝れてないけど、鮮明に覚えてて、夢分析的に何かあるんかなーと思って、書き残すことにします。

6月の高等教育系の学会年次大会

6月には,高等教育系の学会の年次大会が2つあります。

 

1つ目は,大学教育学会第45回大会。会場は大阪大学吹田キャンパス,6月3日(土)・4日(日)に開催されます。自宅から徒歩圏内ということで,超楽チンです。

 

自由研究発表の部会6「学士課程教育(2)」(2日目午前)において,以下2つの発表を行います。

 

  1. 岡田有司・山田剛史・半澤礼之・家島明彦「学生の特徴と教養教育・専門教育における学びの関連」
  2. 山田剛史・半澤礼之・家島明彦・岡田有司「心理的安全性と教養教育・専門教育における学びの関連」

 

岡田有司くん@東京都立大が代表を務める科学研究費補助金(基盤研究(C))「教養教育および専門教育における学びの両立を可能にする教授・学習要因の解明」(R4〜R7)の共同研究(全国調査)の成果を発表します。

 

4名とも心理学者(僕はこのアイデンティティはあまり強くないですが…)で,みな大学院時代から付き合いのある気心知れたメンバーなので,初年度から全国調査を実施したりと楽しみながらいいペースで進んでいます。

 

僕は今回の全国調査の中に組み込んだ心理的安全性に着目して,学生の学びと成長に関する尺度の潜在ランク分析の結果を絡めつつ,教養教育・専門教育における教授・学習環境要因に関する検討を行っています。なかなか面白い結果になりました。同じ部会で連続して発表しますので,よろしければお越しくださいm(_ _)m

 

同日の午後は,部会16「大学運営」にて司会を努めます。

 

2つ目は,日本高等教育学会第26回大会。会場は千葉大学西千葉キャンパス,6月10日(土)・11日(日)に開催されます。大学教育学会とは毎年1週間違いになります。大学教育学会の方がメインなので,そちらを優先することが多いのですが,今年度は大学教育学会が徒歩圏内なのと,2日目午前中のⅡ-5部会「教学マネジメント」で司会を仰せつかったので行くこととします。(千葉というのも魅力的。ふふふ)

 

ということで,6月前半の週末は学会三昧になります。

会場で見かけたらぜひお声がけ下さい。

心理的安全性に関する論文が刊行されました

新年度が始まりましたね。

 

先月末,心理的安全性に関する論文が刊行されました。

正式名称は以下の通りです。

 

山田剛史(2023)「大学教育における心理的安全性の重要性と学生エンゲージメントに及ぼす影響」『関西大学高等教育研究』14,7-18.

https://www.kansai-u.ac.jp/ctl/activity/pdf/kiyo_no.14_pdf/14_02.pdf

 

学内紀要ですが,コロナ禍での経験を踏まえて,教育実践において学生の学びと成長を成功に導く上で重要なエッセンスであると思われる「心理的安全性」に着目し,その重要性と実践的なポイントおよび実証的な検証を行っています。

 

アクティブラーニング経験が増加しながらも,学生の学びが必ずしもアクティブになっていないといった実態はベネッセの大学生調査で常に出てくる問題ですが,そこには教員の有する教授・学習観や提供される教授法といったことだけでは説明できない問題があると思っていました。また,学生の動機づけの問題に帰属させることも出来ますが,もう少し違う問題が潜んでいるとも感じていたし,どうすれば学生のエンゲージメントを高められるかといった実践的な解はなかなか得られずにいました。

 

2018年に学生エンゲージメントに関する論文を書き,その時点でのこれらの問題への解答を得ようと試みましたが,十分ではないと感じていました。ただ,それが何なのかをうまく言語化出来ずにいました。今回,心理的安全性という観点にたどり着き,腑に落ちました。まさにこれだ!と。それがコロナ禍の遠隔授業の実践と種々の調査等によって相対的に導かれたのもある意味ありがたい経験でした。

 

山田剛史(2018)「大学教育の質的転換と学生エンゲージメント」『名古屋高等教育研究』18,155-176.

https://www.cshe.nagoya-u.ac.jp/publications/journal/no18/09.pdf

 

よろしければ,両方をお読みいただき,感想などいただければ幸いです。

 

少し心理的安全性にこだわって,現在の代表科研と分担科研でも調査を計画・実施していますし,学会等でも発表していこうと思います。

よく飲んだ3月

今月は飲み会が5回ありました。コロナ禍以前でもなかなかありませんが,本当に久しぶりです。最近色々あってメンタルがかなり落ち気味なのですが,少しお酒の力も借りてそれなりに楽しく過ごせる時間もあって感謝です。

 

★科研メンバーとの飲み会(3/2)

今年度から始まった岡田くん@東京都立大学が代表の科研「教養教育および専門教育における学びの両立を可能にする教授・学習要因の解明」のメンバー4人と大阪で飲みました。他のメンバーは,半澤くん@北海道教育大学釧路校,家島くん@大阪大学で,みんな大学院時代から付き合いのある心理学者です。ちょうど,日本発達心理学会が立命館大学OICキャンパスであるということで集まりました。利害関係なく気心知れたメンバーというのはいいものですね。楽しかったです。

 

宣伝ですが,先日,全国調査(第1弾)も取り終わり,早速,次の大学教育学会@阪大で2本発表予定です。

 

★学生ユニット「MOCA」の追いコン(3/3)

連日ですが,MOCAのメンバー4人の追いコンです。午後から研究室でミーティングを行ってから,関大前の居酒屋に。MOCAの活動を振り返ったり,これからのことを話したり,恋愛話をしたりと,楽しい時間でした。1年間の活動,本当におつかれさま。

 

立命館SSPコーディネーターとの懇親会(3/17)

数年前から,立命館大学Student Success Program(https://www.ritsumei.ac.jp/ssp/)の外部アドバイザーを努めています。ほぼ月1回のペースでコーディネーターのみなさん(各キャンパス2名の計6名)と研修や勉強会,1on1ミーティングなど様々な形で懇談会を行っています。とても良い取組で,関大で出来たらいいのに,といつも思っています(実際,会議等でも結構言っていますが…)。

 

6名のコーディネーターはバックグラウンドも多様で,でもみな共通して学生の学びと成長を心から願っている伴走支援のプロフェッショナルだと感じています。成果発表なども意欲的に行っており,以前収集したコーディネーターへのフォーカスグループインタビューの結果をまとめるべく,研究会も立ち上げました。と言っても,とりあえずは時限付きで,論文投稿までを目指すものですが,「学習支援者研究会(略して,支援者研)」と命名して,この日からスタートしました。

 

夜は阪急茨木市駅まで移動して懇親会。何だかんだでみんなで飲んだこと無かったので,楽しいひと時でした。

 

★学生ユニット「つよしずし」の追いコン(3/19)

卒業メンバーがいるのと,ひとまずつよしずしの活動おつかれさまということで開催。ユニット名がつよしずしなので,研究室でお寿司を食べようということで。

 

卒業するメンバーのために,それ以外のメンバー・僕とで事前にZoomで収録しておいたサプライズメッセージ動画を流したり,プレゼントを渡したりと,みんなのあったかさが染みる会でした。現在,休学して韓国に留学中の学生(リーダー)も,Zoomにて参加してくれて,つよしずしの活動を振り返ったり,これからの話しをしたり,ちょっとしたインタビューも撮らせてもらったり,たくさんのことを話しました。地域の活性化のために一丸となって本当に頑張ってくれました。卒業後も付き合える仲間に出会えて(なれて)良かったね。おつかれさま!

 

 

★関西在住の元愛大関係者の集い@佐藤家(3/22)

最後は,タイトルの通り,元愛媛大学関係者で関西在住のメンバーが佐藤さん@阪大の家に集まってのホームパーティー。僕はしばらく付き合いが無かったのですが,先日の教育学術新聞の対談企画で久々に一緒になったこともあり,お声がけいただき参加しました。元スタッフ5名と元学生3名の計8名。食事は1人一品ずつ持ち寄る方式で,佐藤さん選りすぐりのワインを堪能しました。

 

18時開始で気づけば0時前。電車では途中までしか帰れず,結局,タクシーを使って帰宅。みんなそれぞれの近況や将来のことなど,色んな話をしました。遅ればせながら,関大への異動(教授昇進)のお祝い(プレゼントと手紙)をいただくなど,楽しい時間でした。

 

色んなタイプの人達と色んな形態で会食することが出来て,やっぱりこういう機会は素敵やなと痛感しました。

卒業おめでとう

少し前になりますが,今週20日は本学の卒業式でした。午前の部と午後の部に分かれて実施されました。

 

こういう時,僕のような学部所属とは違う大教センター系の教員はあんまり特別感がないんですよね。共通教養教育などの授業という形でしか学生と関わることがないので,学生の卒業を見送るというセレモニーにまで至ることがありません。

 

ただ,今年は何名かの学生から「先生,研究室いて下さいね!」と声をかけてもらっていたので,朝から研究室にいるようにしました。理由は,今年度からスタートした「関大生の学びと成長加速プラットフォーム」のユニット活動に取り組んだ学生らが卒業するからです。卒業要件に一切関係ない非公式のゼミ活動ですが,この1年一生懸命取り組んでくれたので,見送ることが出来て嬉しかったです。

 

ユニット03「つよしずし」からは1人が卒業します。右の学生は3回生の時に授業を受けてくれた学生で,着付けの前に一緒に来てくれました。つよしずしの3回生のメンバーも駆けつけてくれて,一緒にお見送りしました。企業に就職で東京に行ってしまうのだけど,身体に気をつけてがんばってね!

 

つよしずしからは1人卒業

 

ユニット02「MOCA」は4人全員が卒業します。卒業式が終わってから夕方に研究室を訪ねてくれました。このユニットは,先日のブログでも紹介した重厚なレポートを作成したり,素敵なイベントを実施してくれたりと,学生参画による大学教育改善を具現化する貴重な取組を行ってくれたので,とても感謝しているし,寂しい気持ちもあります。とは言え,教職課程の授業で出会った4人ですが,2人は大学院進学(1人は学内,1人は京大に),1人は大学職員,1人は民間企業とみな教職以外の道に進むことになり,色々関わることもあるので,今後とも継続していけたら良いねと話しています。みんな,それぞれの道でがんばってね!

 

MOCAのみんな。素敵な人生を。

 

外を歩けば,他にも授業を受講していた卒業生から声をかけられたり,卒業生を見送りに来た学生らと立ち話したりと,なんだかんだで1日卒業式を味わわせてもらいました。多くの教職員が言います。在学中は色々あっても,卒業式に学生たちを見送る場面は,自分たちが関わってきたことが報われる喜ばしい瞬間です,と。本当に素敵な瞬間ですね。

 

激動の時代,どの道を選んでも大変な社会状況ですが,みんなで支え合いながら,幸せに満ちた人生を歩んで欲しいと思います。

 

Bon Voyage!

学習環境が学びを創る

一昨日ですが,うちのIRスタッフと内田洋行ショールーム「未来の教室Future Class Room」を訪問してきました。

 

www.uchida.co.jp

 

12年前に設置されていて,その当時から知っていたし,営業部長さんとは随分前から知り合いで,何度か声かけもいただいていたのですが,なかなか行けておらず。先月の本学IRフォーラムにも来てくれて,改めてお声がけいただいたので,スタッフと調整してようやく実現しました。

 

今だからこそ良かったかなとも思います。当時はアクティブラーニングの推進を目的として,机や椅子,壁面複数面への投影などが中核だったと思います。今回の訪問では,コロナ禍でのオンライン授業の経験や関連するテクノロジーの進化が,教室環境に実装されていて,それらを体験・体感することが出来ました。一つ一つは「こんなの見たことない!」みたいなものはなく,様々なツールやアプリケーションをいかに効果的・効率的に使用・運用できるかというところに感激しました。その意味では,「未来の教室」ではもはやなく「現代の教室」になっているのかなと思いました。GIGAスクール構想なども相まって,動き出している地方自治体と教育行政なども増えてきましたね。そうなってくると,技術的には既に様々なことが出来る環境があるにも関わらず,大学はどうだろうかと感じます。

 

コロナ禍でオンライン授業が一斉導入されたという経験は,日常の学習環境にどのような影響をもたらすだろうか。外部資金等で特別な部屋が学内に数個あるかないかみたいな大学も少なくないと思います。依然として,教室環境は固定机に長机,ICTどころか輝度の低いプロジェクターに鮮明さにかけるRGB仕様の部屋も少なくなかったり。古くなったらリプレイスするだけで,リノベーションの発想がなかったりします。

 

色んな大学で聞こえてくる声は,施設設備・管財関係の部署と教学部署とがほとんど連携しておらず,教育・学習の観点(どういう環境だとよりよく学べるか)ではなく,単純な予算の観点(どの業者がより安いか)から決まってしまうという点です。もちろん,予算度返しで出来るものではありませんが,入試対応といった観点もありますが,もっと戦略的に予算確保含めて,両者が連携のもと進めることが不可欠だと思うのです。その実現のためにも,該当する部署の方や執行部の方々に,こうしたショールーム等に行って自身で体験してイメージを深めてもらうことも大事なのかなと感じます。

 

広さに対する座席の数,照明,音響,机や椅子,プロジェクター,スクリーン等,学習環境はこれらの相互作用によって学習効果が跳ね上がります。また,FDの観点からも,環境が変われば出来ることも変わる。教員の挑戦を生み出し,結果的に授業改善が進む。学習内容や教育方法といった側面ももちろん重要ですが,ハード面での学習環境の影響は極めて大きいです。ただ,それがなかなか施設設備に反映されない。本当に多くの大学で耳にしますが,どうにかならないものかなと思います。うちも正直やりやすい教室を探すのに一苦労で,割り当てられる部屋のほとんどがやりにくかったりします。もちろん,環境が悪いからアクティブラーニングは出来ないという言い訳は絶対したくないし,どんな環境でも出来るは出来ますが,DXやICTなどこれだけ時代が変わっているのに。もう少し教室の学習環境がアップデートされることを切に願います。ラーニングコモンズみたいな授業外学習のためのスペースは一定進みましたけど,通常の教室環境はかなり現代的教育ニーズに対応出来ていないなと思います。

 

今回の訪問ではオフィスフロアも見させていただきました。基本的には社員はフリーアドレスで,自分の好きな席で仕事をしています。前日と同じ場所には座らないように,といったルールはあるようです。椅子も色々で高さも色々。椅子が変わると発想も変わります。そういうところも普通に取り入れられています。部屋の仕切りはなく,あちこちでディスカッションやプレゼンテーション,オンライン会議などできる空間になっていて,カフェスペースや植物(フェイク)なども配置されています。

 

大学でもそういうところはあるかもしれませんが,依然として部署単位に部屋が仕切られていたり,座席はもちろん固定性,空間にゆとりもなく,創造的な仕事ができる環境ではないように感じます。学生の学習環境もそうですが,大人(職員)の学習(職場)環境も大事かと思います。

 

以前から学習環境については色々思うところがあったので,今回の訪問でさらにその思いが強くなりました。諦めるのは嫌なので,これからの学生の学びと成長のために,出来ることをしていきたいと思います。