人生考路

個人と社会のウェルビーイングを高める教育と学びを探究する

最近出た記事・本の紹介

ようやく会議や学外との打合せなどがない日に辿り着きました。本当によく働いた1年でした。

 

ということで,今回は最近出た記事(2つ)と本(1冊)を紹介したいと思います。

 

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1.進研アド『Between』(2023年11月)

1つ目はこちら。読者としてもいつもお世話になっていて,多くの高等教育関係者も読んでいる雑誌になります。全体の特集テーマが「学修者本位の大学のつくり方」となっています。いま話題の〈質保証における学生参画〉についても多くの記事が掲載されています。

 

between.shinken-ad.co.jp

 

私は,今回の特集に際して割とがっつりコミットしました。8月末に進研アドの編集担当者,ライター,カメラマンが来学されて,2時間30分ほど取材を受けました。それが以下オピニオンの形で記事になっています。

 

教員主導の「学修者本位」から学生目線の「学修者本位」へ

 

ここでは学生参画に関わる実践事例(関大生の学びと成長加速プラットフォームとユニット「MOCA」の取組)をベースに話を展開しています。これは,必ずしも認証評価等で言われている質保証における学生参画に収まるものではなく,大学教育全体の議論の中で学生という主体をどう捉えていくのかという根本的な問題構造について言及しています。質保証における学生参画が認証評価の手段として,従前の教員目線のまま導入されても何も変わらないという警鐘を促すという意図もあります。長時間のインタビューを2ページに収めてくれたのはさすがという感じですが,表現し尽くせていない部分も多くあります。ぜひ,この2ページに込められた意図を読み取り,学内での議論へと繋げていただき,本質的な学生参画が展開されることを願っています。

 

また,「学修者本位の大学をつくるには?Q&A」の関西大学のパートは,私が予め原稿執筆したものがベースとなっています。他大学の回答も含めとても読み応えあるものになっています。

 

さらに,今回の特集の冒頭「学生に聞く!:学修者本位の大学とはどんな大学?」では,本学卒業生(現在京大大学院M1,かつ本学アドバイザリースタッフ)で上記MOCAの代表を努めてくれた奥村さんが登場しています。編集担当者より打診をいただき,ぜひにということで紹介させてもらいました。とても素敵な内容の発言をしてくれています。これからが楽しみです。

 

学外の色んな方から,メールやX,口頭にて,「記事読んでいます」「参考にしています」「学内で共有して議論しています」など声をかけていただいています。このテーマは,私にとってもとても重要で,大学教育の本質的な問題を孕んでいるため,実践的にも研究的にも探究していきたいと思っています。

 

2.Gakken『学研・進学情報』(2023年12月)

2つ目はこちら。きっかけは,本学高大連携センター主催の探究学習研修講座(2023年10月)を実施したことです。関係職員から「探究学習に関する様々な問い合わせが来るが,どう対応すれば良いのか」といった相談を受けて実現したものです。その情報を掴んだ学研の方が研修に参加され,その後,オンラインで2時間ほど取材を行い,以下の記事に至りました。

 

特別レポート 高校での探究学習⑪ 探究学習のポイント「主体性の育成を中核に,大学の先につながる学びとなっているか?」

 

4ページにわたって探究学習のポイントとして当方の発言等を取りまとめてくれています。探究学習については色んな識者もいて,アプローチは様々ありますが,山田的な解釈と大学,社会への接続という視点から探究学習を捉え実践するためのエッセンスがギュッと詰まったものになっていると思います。残念ながら会員限定の記事になるのですが,もしお読みになりたい方がおられましたら,当方までご連絡下さい。

 

2022年度から「総合的な探究の時間」として必修化され,各校は対応に追われています。元々SSHやSGHなどで科学探究を中心に実施していた学校はさておき,指導要領で明示されたことで全ての学校に求められることになったのでそれはもう大変です。次年度はいよいよこのカリキュラムを受けた高校生が受験生となる年です。大学の入学者選抜もそこに照準を合わせてきていたりしますし,入学後のカリキュラムにも影響してくるため,大学側も備えが必要です。

 

個人的にもこの探究学習の流れは大賛成だし,現代社会における生徒・学生の学びと成長の促進という観点からもとても重要だと考えています。とは言え,日本の悪いところであるすぐに受験の手段に堕してしまわないためにも,注視・コミットしていきたい領域です。

 

そんな思いもある中で,今回このセミナーをきっかけに複数の高校から探究学習の(包括的な)指導に関する打診を受け,学校長や探究学習の中核を担う先生らと面会したりしています。次年度からいくつかの学校に関わっていくことになりそうです。またお伝えしたいと思います。

 

3.書籍『学びを育む 教育の方法・技術とICT活用:教育工学と教育心理学のコラボレーション』(2023年12月)

本の紹介です。こちら同僚の岩﨑さんが中心となって編集された教職課程のテキストを想定した書籍になります。

 

www.kitaohji.com

 

〈本の紹介より〉対話によって人は学び,知識が構成される。学びのメカニズムをふまえながら,いかに適切な教育方法を採用して授業設計するかについて解説。ICTを活用した個別最適な学び・協働的な学びへの道筋を探求する。教職課程コアカリキュラム「教育の方法及び技術」と「情報通信技術を活用した教育の理論及び方法」に対応。

 

私は,第16章「学習評価の原理・方法と技術を考える」を執筆しています。大学教員向けのテキスト「シリーズ大学の教授法4 学習評価」(2018年)でも当該テーマについて書いていましたが,改めて初等中等教育(教職課程の大学生)向けということで,内容を差別化しつつ網羅的かつコンパクトにまとめました。

 

www.tamagawa-up.jp

 

他の章も読みやすく,各章には授業で使える「演習問題」や「もっと学びたい人のための読書」コーナーも設けているので,次年度のテキストにぜひ。

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来年も頑張って執筆にも励んでいければなと思います。