人生考路

個人と社会のウェルビーイングを高める教育と学びを探究する

高等教育開発者をめぐる構造的問題

今日は,早稲田大学の大学総合研究センターで講師(任期付)をされている蒋妍さんが来研してくれました。

 

蒋さんは,京大の高等教育で博士号を取られたのですが,当時僕はそこの教員として彼女が色々悩みながら頑張っている姿を見つつ,いくばくかの論文や精神的なサポートをしていました。7年半ぶりに会いました。

 

この間どんな風に過ごしてきたか,どんな悩みや葛藤があるのか,今後は……など久しぶりに色んな話をしました。

 

元々の用事は,本学教育推進部でライティング支援に携わってくれている特別任用助教の張暁紅さんに対して,科研費のインタビューで来られていたのですが,僕との繋がりもあるので,張さんも交えて一緒にお話しましょうということになりました。

 

先週金曜には,東洋大学IR室の劉文君教授が来研され,2時間ほどじっくりお話しました。

 

近々で3名の中国人研究者とゆっくりお話をしましたが,大学も立場も職務内容も異なるも,外国(日本)で高等教育研究・開発・支援に携わることの大変さや難しさを改めて実感しました。国際系や外国語教育,研究所といった部署ならまだしも,全学的な高等教育のフィールドでお仕事をするのは,日本人でも大変です。そもそもポストは安定していないし,人数も少ない上,学内での理解や協力が得られるかといってもなかなか厳しいのが実情です。この辺の話は昨日のブロク(対談記事)でも触れていますが,日本の高等教育が抱える歴史的かつ構造的な問題です。

 

激動の時代において高等教育の課題が年々複雑化・深刻化する中,専門的にそれらを読み解き,学内に適切に普及し,然るべき対策や支援を行う部署や人,その育成は,本当に急務の課題だと思うのですが,本当に進まないですね。言葉を選ばずに言わせてもらうと「馬鹿なの?」って思ってしまいます。ほんと汚くてすみません。今さっきも,高等教育開発の部署に務める知人から「上席から次の任用更新はありませんという電話があって途方に暮れている」という連絡があって,本当に一生懸命大学のために頑張っている若い人がなぜこんな目に会うのかと。さすがに怒りますよ。怒っても事態が改善するわけではないので,僕は僕なりにこうした仕事の重要性を身を以て示しつつ,色んな場所で言い続けるつもりですが。

 

教員と職員という2種類しかいない,かつ,海外と比べても,教員比率が圧倒的に高くて職員の数があまりにも少なかったり,ずっと言われているものの第3の専門職も一向に広がらない。もう1つの可能性は職員の育成。これは現実的ですね。仕事と大学院の両立に励む意欲的な職員も増えてきたし,学外のシンポやセミナーなどにも熱心に参加している職員の方とたくさんお会いします。とは言え,大学院といっても,高等教育を専門的に学べる大学院は本当に少ないのです。分野も比較・政策系はまだあるかもだけど,教授・学習系はほぼ皆無じゃないですかね(それこそ京大の高等教育くらいか)。本学の学生や他大学の職員から「山田先生は院生を受け入れていないのですか」と言われることもしばしばなのですが,現状はお断りするしかありません。「需要もあるしやらせて欲しい」と面接時にも息巻いたわけですが,なかなか厳しいでしょうね。大学間連携×オンラインの組み合わせで出来ないかなぁ。。

 

最後少し逸れてしまったかもしれませんが,要するに日本の高等教育開発を担う組織や人の配置,育成は重要であるにも関わらず,非常に乏しい状況で,それが外国人となるともうえげつなく大変だということですね。

 

みんなで元気に乗り越えていきましょうね,とお別れしました。