数回に渡って全国調査のデータから学生の実態と問題を見てきましたが、今回は大学側から見てみたいと思います。
大学の組織力を測る指標や調査って、方法論的にも実施面でも難しいですよね。大学としてどんなことをやっているか、といったことについては、毎年実施されている文科省の実態調査やら、認証評価、各種補助金申請などでも一部見ることは出来ますが。
今回はそういう調査データとかではなく、ちょっと違う視点(現場観察)から見てみたいと思います。
先に言っておきますが、とても主観的なものですので、絶対視は出来ません。あしからず。
当方、年間で大体25件(月に2回)程度、学外で講演・研修をさせてもらっています。これくらいが限度かなということで、ある程度調整しています。個別の大学でのものもあれば、多くの大学関係者が集まるシンポジウムなどもありますが、これまで150以上の大学に伺っていると思います。全国47都道府県制覇には及ばないものの、国公私立、都市・地方、大中小と様々な設置形態や規模の大学を訪れています。
その中で、講演会・研修会の当日はもちろん、最初の依頼から当日までのやりとりまで、色んな対応を経験しています。数年前まではどこもあんまり大差なかったように感じますが、最近は随分違うなぁという印象です。その経験から大学の組織力を、いくつかの観点で整理してみたいと思います。なお、ここで挙げているものは全て実体験になります。
【依頼時~当日】 (数値が大きい方が良い状態)
まず、依頼時から当日までのやりとりで、大体の雰囲気が分かります。
(A.依頼者/やりとりをする人)
- 職員のみの場合(事務的にぬかりはないが、教員との温度差が大きい)(私立に多い)
- 教員のみの場合(事務的な点でモヤモヤすることが多く、従来的な教員-事務の構図)(国立に多い)
- 教員が依頼し、内容を詰めていき、職員が準備物などを対応する場合(両者が役割分担)(私立に多い)
(B.依頼時の内容)
- 何でもいいので先生の話したい内容で
- テーマが漠然としていたり、具体的に明示されない
- テーマに至る経緯を含めて具体的に設定されている
- 3に加えて、学内の状況が分かる資料を送ってくれる
- 3、4に加えて、私についても一定リサーチ済みで、その必然性も書かれている
【当日】
当日で組織力を感じるポイントはいくつかあります。会場、参加者(割合)、そして最も分かりやすいのは学長の参加かと思います。
(C.会場)
- 研修(特にワークショップ)に適した会場が用意されていない
- 設備やレイアウトなど準備が整っていない
- 教室配置や設備、レイアウトが適切に準備されている(事前に打合せ済み)
(D.参加者)
- 企画者による周知が不十分で、任意のため参加者が非常に少ない(その分、参加者は意欲的でやりやすいが組織的には不十分)(国立に多い)
- 教授会などに引っ掛けたり、出欠管理をしたりするなど、強制力が強いため参加者は多い(その分、参加者のモチベーションは多様でやりにくい)(私立に多い)
- きちんと周知をして、強制をするわけではないが、多くの教員が参加している(行って良かったと思える)(私立に多い)
(E.学長の参加)
- 全く登場せず
- 始まる前に案内されて名刺交換だけ
- 開会挨拶だけ
- 全体に参加(ワークショップ等には非参加)
- 全体に参加(ワークショップ等にも参加)
- 5の後に、別室にてディスカッション
特に、学長の参加度合いは非常に分かりやすい指標だと思います。というのも、上記5や6のような形で学長が会に参加している大学は、まだまだ少数ですが、先生方も熱心に参加していて、組織としての一体感を感じます。逆に、1~3のような大学は、たとえGP/APなどを多く取得していても、一部の先生方が必至に頑張っているけど、全体的に冷めた感じあるいは強い疲弊感が漂っているように思います。
他にも細々したポイントはありますが(キャンパスで遭遇する学生が挨拶してくるとか、事前のパワーランチが用意されているとか)、できればこちらも気持ちよく伺いたいなと思うので(やる気のある大学に行くとこちらもすごく元気をもらいます)、上記のポイントなんかは意識していたりします。
ちなみに、どういう形態、規模の大学が、上記のポイントのどういうタイプに属するかも大体把握出来ていますが、さすがにそこまでは書かないでおきます。
こんな記事を書くと、「山田に依頼するの嫌やなぁ」と思われそうですが、私も時間を割いて伺う以上、色んなことを学びたいと思っています。その点、ご了承ください。
今回は、これからの大学において一層重要になってくる組織力について、網羅的な実態調査などでは見えにくい側面を、講演・研修講師として伺う際の一連の対応という視点からみてみました。