人生考路

個人と社会のウェルビーイングを高める教育と学びを探究する

学生を信じ抜くこと:学習から成長パラダイムへ

この数年、自身の教育観が随分と変わってきたように感じます。

 

教授から学習へ、といった一般的に言われている点で言えば、教員になった当初から学習パラダイムに依拠してきています。

 

教育の力点を学習あるいは学習者に置いて、彼らがどう学び、成果を獲得できるか、という考え方です。

 

今もその考え方は否定しませんが、私にとってより重要なのは、学習の質や学習成果の多寡ではなく、成長の促進にあるようです。

 

学習パラダイムから成長パラダイムへのシフトと言えるものです。学生が大学という空間、大学生活という時間の中で、いかに成長できるか。授業や教育を通じて、いかにそれを促せるか。そのために、教育者として学生とどう関わるか。私にとっての最大関心事はそこにあるようです。

 

今回のコロナ禍でさらにその想いが強くなりました。また、新年ということもあり、以下の映画を観ました。

 

『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』という映画です。2016年に劇場公開されたフランスの映画です。Amazon Primeで無料でした。便利な世の中です。詳しくは以下の通り。

 

実話をもとに、学校から見放された問題児たちの集まるクラスが、ベテラン教師の情熱によって次第に変化していく様を描いたドラマ。貧困層が暮らすパリ郊外のレオン・ブルム高校。様々な人種の生徒たちが集まる落ちこぼれクラスに、厳格な歴史教師アンヌ・ゲゲンがやってくる。情熱的なアンヌは、生徒たちに全国歴史コンクールに参加するよう勧めるが、「アウシュビッツ」という難解なテーマに生徒たちは反発する。そこでアンヌは、強制収容所の生存者を授業に招き、彼らの経験を語ってもらう。その壮絶な話を聞いた生徒たちは、その日を境に変わっていく。本作にも出演したアハメッド・ドゥラメが自身の体験を映画化してもらおうと動き出したことから実現した作品で、ドゥラメはセザール賞有望男優賞にもノミネートされた。(映画.comより)

 

すごく良い映画でした。自分の教育観に合致しているなと痛感しました。そして、成長パラダイムに立脚して教育に関与する上で最も大切なことは、単に学生を信じるだけではなく、「信じ抜くこと」だと強く感じました。

 

学生と関わっていると、「何でこんな風になってしまうんだろう」とモヤモヤすること、こちらが一生懸命働きかけても裏切られることはしょっちゅうあります。そこで、「やっぱり所詮学生は…」とならずに、何故そのような振る舞いになってしまうのか、どうすればその学生の想いを理解できるのかを考えていきたいし、そのためにも信じ抜く覚悟がいるなと思います。

 

教育に係る細かな理論や方法論、精緻なデータ以前に、この当たり前のようなシンプルなことが出来れば、大学はもっと良い学びと成長の場になるのだと思います。

 

こんな考え方は業界関係者には全くウケないと思いますが、それでえぇやんと思っています。

 

そんな考え方を持って、教育者として、教育開発者として、関与し、研鑽を積んでいこうと、気持ちを新たにした2021年の三賀日でした。