先週は丸々1週間、米フロリダで開催されたAIR Forum 2018に参加してきました。
AIRとは、Association for Institutional Researchの略で、半世紀以上の歴史のあるIRに関する世界最大の専門家団体です。AIR Forumは、米国を中心に世界からIRに携わる実務関係者や研究者、管理者や企業の担当者などが集まる年次大会です。
僕は、2年前のニューオーリンズで開催された時に初めて参加して、今回は2回目でした。
日本ではまだ歴史の浅い、しかしながら政策的にも重要視されていて、多くの大学が試行錯誤で取り組んでいるIR。課題も多く、大学内部では実施に様々な障壁もあって、実践はもとより研究面でも蓄積があるとは言えません。
その点、IRの発祥国であり歴史がある米国では、実践レベルでも研究レベルでも相当の蓄積があります。
現地に行って参加するメリットは、色んな発表が聞けるのはもちろんですが、いまIR関係者にとって重要な課題は何なのか、どんな発表に参加者が集まるのか、共通する思想や概念、また頻発されるキーワードは何なのかなど、論文やインターネットだけでは分からない空気感などの非言語情報も含めた色んな情報を受け取ることが出来ます。
これは必ずしもこのAIRだけではありませんが、米国の教育・研究者が多く挙げるキーワードとして、"Student Success"や"Well Being"、(Student) Engagement"があります。これは私自身の研究テーマと深く関わるものなので、様々な実践、研究の中でこれらが共通の目標概念として据えられているのを確認できるのは大変力になります。もちろん日本でも喫緊の課題である"Learning Outcome"は頻出語ですが、その上位あるいはそのプロセスに位置づく概念として上記のものが入っているのが印象的です。これは教育改革を進める上で、日本と米国の重要な違いを産み出すことになっていると思います。
また、今回聞いた発表の中で目からウロコだったのは、下記のものでした。
この発表以外にも何度か目にしたキーワードの1つが、"Sence of Belonging"(所属感)でした。この発表では、このSOBの構造や機能について調査し、成績やリテンションとの関連を検討したものでしたが、様々なアウトカム/アウトプット指標に最も影響するというものでした。
これは私自身がエンゲージメント研究で重視している情緒面での指標の1つになりうるもので、これは是非、エンゲージメント科研の中でも調査したいです。
海外の学会では、偉い人(業界の有名人)が行うKeynote Speechなど、登壇者がスライドも資料もなくフリーに語り合うというセッションが結構多いですが、これを理解するためにはかなり日常的に彼らの動向を見たり、米国の文脈を理解していないといけないなと思います。個人的には、データや理論、モデルをちゃんと示してくれるので、個人研究発表の方が好きかな。
日本から乗り継ぎを含めると20時間以上かかるので、とっても疲れましたが、頑張っていくだけの価値はあるなと思いました。
来年はデンバーだとか。
引き続き、日々精進あるのみ!