学生の満足度調査は多くの大学で実施されていると思います。
満足度は大学教育の成果として重要な指標の1つでしょう。各大学では、満足度の向上を目標に掲げ、様々な教育・学習環境の整備を行っています。
ベネッセ教育総研が2008年から4年ごとに実施している全国大学生調査の3回目の結果が先般アップされました。
私も第1回調査から研究メンバーとして関わってきているのですが、データを見ていて気になる点について考えてみたいと思います。
その1つが学生の満足度の低下です。
この10年余、大学教育改革は一定進展し、学生を取り巻く教育・学習環境はより良いものになっていると思います。そう言い切って問題ないと思います。
にも関わらず、調査を行うごとにあらゆる面での満足度が低下しているのです。
(上記報告書p.19より抜粋)
この結果をどう解釈することが出来るでしょうか。
個人の満足度(感情)は相対的なもので決まると思います。
- 大学全体が環境整備に着手する前は、みんな「そんなもの」だと思っている。だから特に不満足感を覚えない。
- 環境整備が進むと(いくら進んでも、どこを見渡してもという状況になるのはほぼ不可能に近い)、「あれ、なんかあの学部、あの部署、あの先生、あの職員、いい感じやん。それに比べてうちの・・・」となる。だから不満という感情が相対的に生起されてしまう。
- SNSの発展で、大学を超えて学生同士が情報共有することで更に相対化される。しかも、正の情報より負の情報の方が発信・拡散されやすいので、その部分が強化されてしまう。
もっと広げて言うと、大学全体が、社会全体が、CS(顧客満足度)を重視した利便性の追求を行うことによって、学生の中の「やってもらって当たり前」「不便=不満」という意識が醸成されているという側面もあるかもしれません。
これは、学生の学びへの受動性(あるいは自律性)とも絡む問題で、結構根が深いものだと考えます。
大学経営が厳しい中、満足度は進路選択や在留率にも影響することから、無視は出来ないものの、その在り方は上記のような形で変動してしまうため、関係者は注意して捉える必要があるように思います。
なかなか悩ましい問題です。
みなさんの大学では、いかがでしょうか。
ぜひ、経年で比較して、なぜそのような変化が生じているのかを考えてみると良いのではないでしょうか。
ちなみに、現在、申込期間中ですが、この調査をベースに教員、職員、学生でこれからの教育を創造するワークショップを実施します。こんな風にデータを読みながら、これまでの足跡を振り返り、声を重ねながら、これからの教育を考える、そんな機会に足を運んでみませんか。