人生考路

個人と社会のウェルビーイングを高める教育と学びを探究する

【発行】コロナ禍における授業・学生生活に関するレポート

今日は、主催イベントの教学IR/FD合同フォーラムでした。この報告は改めてしたいと思いますが、今日のイベントに合わせて作成した以下の調査レポートを紹介したいと思います。

 

関西大学教学IRプロジェクト(山田剛史・矢田尚也著)「コロナ禍における授業・学生生活に関するレポート」

https://www.kansai-u.ac.jp/ir/research/asset/index/ir_corona_report.pdf

 

コンパクトにまとめていますが、一定のデータに基づいて、コロナ禍の経験から大学が考えるべき大事な論点を提示することが出来たと感じています。

 

ご笑覧いただければ幸いです。

2回の新聞取材で伝えたかったこと

昨年12月に2度の新聞取材を受けました。いずれも読売新聞東京本社からで,一つは教育部(12/1),一つは編集委員(12/17)の方でした。それぞれZoomで1時間30分ほどじっくりお話ししました。これまでであればメールや電話で簡潔にやり取りをしていたわけですが,こういう時に便利だなと改めて思いました。

 

取材記事はそれぞれ以下のような見出しで掲載されています。

  • スキャナー「大学対面授業「全面」二の足」(朝刊,2021年12月5日)
  • 解説「コロナ後の大学教育」(朝刊,2022年1月22日)
  • 「学生のためになる「よいオンライン授業」とは…コロナ後の大学の授業はどう変わる?」(オンライン,2022年2月11日)

 

記事自体は大きいもので,僕のコメントは少量にはなりますが,国内外全てを巻き込んで議論されている重要なテーマということもあり,自分なりに考えていることを少しでもお伝えできたので良かったなと感じています。

 

色んな情報を圧縮していることもあり,コメント自体は短くなったわけですが,担当の方は最後の最後まで丁寧にこちらに確認を取ってくれて,一文一文の表現にまでこだわってくれました。紙面が限られる新聞という媒体で,幅広い読者層に興味を持って理解をしてもらえるよう伝えるのは大変な仕事だなと改めて感じました。

 

そこで僕が何を伝えたかったのか。

 

この間,大学の遠隔授業60単位上限の緩和について議論されていました。取材時は「おそらく緩和されていくだろう」という状況でした。現在は,中教審においても緩和の方向で具体的に検討をしていく段階に入っています。

 

経緯としては,現在特例措置となっている上限解放を,コロナ後も上限を撤廃して欲しいという要望が私大連から文科省に出され(文科省からもその関連で個別に相談がありましたが),中教審や教育未来創造会議などで議論がなされ,今は上記のような方向に進んでいるということですが,僕は最初とても違和感を覚えました。

 

確かにオンライン授業に関する効果は一定認められるにせよ,60単位(卒業要件単位位の約半分)でも大概多いのに,それを撤廃とはどういうつもりなんだろうかと。

 

学内でもずっとコロナ禍での学生の授業・学生生活に関する調査等を実施・分析してきていますが,オンライン授業をそこまで広げていくことが望ましいと感じるような結果は出てきていません。学生の声を聞いてもそうです。

 

にもかかわらず,多くの大学関係者がこうした上限緩和について同意している。

 

一体誰を見ているのだろうか。

 

その疑問を整理して,大学教育の方向性に対して一つの論点を提示したかったというのが,今回の取材コメントにあたります。

 

端的に言えば,現在大学進学者(在学者)のほとんどは18歳〜22歳の青年期後期に相当する若者です。青年期後期は,重要な他者との出会いや様々な経験への傾倒(コミットメント)を通してアイデンティティを確立し,大人へと成長・発達していく段階です。一つは,この大学生の成長・発達の文脈があまりにも考慮されていないのではないかという問題提起です。もう一つは,オンライン授業(特にオンデマンド授業)に適応している学生は誰かという点です。確かにオンデマンド授業に対する満足度は高いし,こうした授業を続けて欲しいという意見も相当数に登ります。ただし,それが本当に効果的かという点では疑問が残ります。物理環境的な利便性という話と教育効果とは別の話で,データを見る感じから「学べた気になっている」感覚が強く,定着しているかという点では対面に劣っているのではないかと思われます。これは先の青年期の大学生一般の特徴から考えても理解できるものです。大学における学び方を習得できていない,また十分にモチベートされていない状況で,一人でPCと向き合いながら学ぶというのは非常にしんどい作業です。それでも適応できている人はいます。例えば,それは,知識=覚えるという教授(教員側)・学習(学習者側)の枠組みが成立している場合(従来型の教授・学習観),いわゆる受験学力の高い学生や勉強が好きという学生などが挙げられます。ですので,現状の大学生の置かれている文脈を考慮すると,オンライン授業というのは一部の学生に対して,一部の能力(知識獲得)に偏ったものであり,慎重かつ限定的に使っていく必要があるというのが僕の見方です。

 

そのことと関連して,此度の上限緩和の話で言えば,オンライン授業は大人の学び(リカレント)としては「あり」だと思っています。それは,大人の大半は既に大学教育での学びを経験し,社会生活を営む中で学ぶべき知識や技術が明確になっている,いわゆる自律的な学びが出来るレディネスがある,また,発達的にも青年期を終え成人期にあるということから,物理的・時間的制約がある中で効果的・効率的に学べるオンラインの仕組みは極めて有効ということです。日本の社会人学生(特に学部学生)の比率は極めて低く,これから18歳人口の減少が激しくなる中で,留学生や社会人学生に広げていく教育政策・経営戦略は不可避なのだろうとは思います。ただ,現在大半を占める青年期後期に相当する大学生に対する教育の話と,留学生や社会人に対する教育の話とを分けて考えるべきだというのが僕の考えです。

 

対面・遠隔の方法論的是非あるいは効果的な組み合わせということを議論する上で,その対象である大学生が成長・発達的にどういうステージにいるのかという視点を踏まえて欲しいというのが僕が最も伝えたかったことになります。

 

長くなった割にまとまりがなくなってしまいました。ちゃんとデータも交えながら論文にもしなきゃなと思います。

秋学期の授業を終えて

今日で秋学期の授業が終わりました。オミクロン株が急速な拡大をみせる中、なんとか無事に乗り切りました。

 

秋学期は初年次のPBL科目4コマ(2種類×2クラス)でした。

 

初回から3回目まではオンラインということで、あの手この手を使って、学生たちの間で繋がりが出来るよう工夫しました。4回目から対面になった時のみんなの嬉しそうな表情が印象に残っています。改めて、心理的安全性を高めることの重要性を痛感しました。

 

毎週の授業後の振り返り(感想、質問)に対する翌授業時のフィードバックも力を入れてきました。4クラスあるし、回を追うごとに学生の振り返りの質も良くなり、文字量も増えていったので、なかなか大変でしたが、学生にとって絶対に大事なので頑張りました。

 

授業の最終回は、探究活動の振り返りの後、一人一人前に出ての1分スピーチを行いました。授業での学びとこれからの学生生活への決意を語ってもらいます。たった4ヶ月足らずですが、みんな明らかに成長していることが感じられて、嬉しく思います。

 

ほとんどのクラスで、みんなLINEやインスタの連絡先を交換しています。また、最後はみんなで写真を撮りたい!と言ってくれるので、一緒に写真を撮ります。今期もほとんどのクラスで希望があったので、みんなで撮りました。

 

カッチリとした学習成果ではありませんが、これは僕にとって大事な指標の1つです。でも、これが学びの質にも深く関わっています。特に、大学初年次においては、高校から大学に移行して、環境も仕組みも変わって不安も高いです。そこにコロナ禍なのでなおさらです。

 

学部を超えて語り合える仲間が出来る。そんな仲間と切磋琢磨しながらプロジェクトをやり遂げる。これが大学での学びだよ、面白いでしょ、っていう経験をさせてあげたい。そんな想いで授業を創っています。

 

しんどい状況だけど、学生たちのこれからが素敵なものになることを心から願っています。

2021年の振り返り~番外編~

振り返りその3で終わりにしようと思っていたのですが、書き損ねてしまったことがあるので、番外編として追加します。

 

それは、2021年の2月に日本アカデミック・アドバイジング協会 JAAAを設立したことです。僕はこの発起人の1人として、協会の設立に携わったとともに、初代の副会長を拝命することになりました。

 

僕自身は、直接このアドバイジングを専門に研究・実務に携わっているわけではないのですが、協会が想定するアドバイジングには、狭義の学業的な営みだけではなく、正課内外の様々な営みが含まれていて、より広い意味で学生の成功(Student Success)の実現に寄与することが目指されています。

 

その意味では、僕が教育・研究において重視している関与(Student Engagement)とも親和性が高く、学生に対する深い理解や多様性への配慮など、学生の特徴や特性が中核に据えられていて、むしろ最も近い分野ではないかと感じています。

 

2021年3月に設立大会を開催して以降、5月に1回目のサロン、8月に第1回年次大会、11月に2回目のサロンを開催するなど、役員のみんなと相談しながら進めてきました。まだまだよちよち歩きな状態ですが、会員数も徐々に増えてきました。(ご興味がありましたらぜひ!)

 

協会では、会員相互の情報交換や、ケーススタディをはじめとする実践的な内容を重視しています。理想論や重厚な実践、唯一解を提示するというより、日頃感じている疑問や悩みを共有し、それぞれの置かれている状況や文脈を踏まえながら、納得解を見出していく、そんな場作りを意識しています。今のところ全てのプログラムがオンラインですが、出来るだけリラックスして暖かい雰囲気になるようにも心がけています。

 

粛々と議題をこなしていく無機質な理事会等も多いですが(規模が大きくなると仕方ない部分もありますが)、協会の役員会はお互いの労を労いあったり、互いの大学の情報を共有したり、時にしっかり議論したりしながら、進めていて、とても居心地が良いです。

 

アドバイジングに関わる専門家と称する方々のアメリカ信仰は結構強くて、もちろんそこでの議論は参照しながらも、日本の高等教育の文脈に即したアカデミック・アドバイジングを展開していきたいと思います。

 

2022年は、さらに飛躍の1年にしたいです。

2021年の振り返り〜その3〜

既に2022年に入って一週間経ちますが、最後に本務校でのお仕事について振り返りをして締め括りたいと思います。

 

関大では教育推進部というところに所属しています。とは言え、実際の活動はその中に位置づけられている組織や委員会、プロジェクトを通じて行っています。僕の場合、主に、共通教養教育推進委員会、教育開発支援センター、教学IRプロジェクトの3つに属して、業務にあたっています。

 

共通教養については、主にスタディスキルゼミやプロジェクト学習などの初年次教育科目(+高年次のサービスラーニング型科目)を中心にマネジメントに携わっていますが、2023年度からの共通教養改革に向けて、いくつかの小委員会等に入りながら構想を進めています。より体系的で現代的ニーズに即したものになればと思います。外には見えない実務的な仕事も多く、また、全学委員会方式によるカリキュラムのマネジメントは制約も多くて大変ですが、そういう部分に関わることも大学全体を見る上で大事だと思っています。

 

教育開発支援センターは、主にFD・SD・学生の能力開発を担う組織ということで、教育推進部の専任教員全員が所属し、それぞれの得意分野も生かしながら活動を行っています。年2回のFDフォーラムや各種セミナー、授業アンケート、授業シラバス、ニューズレター、研究紀要など多岐にわたっています。また、例年10月~1月にかけて、教員・職員・学生の三者協働で授業設計を行うFD/SD研修プログラムも特色の1つです。これら諸活動を、教育開発支援室の職員と密にやり取りしながら進めています。色々やってはいますが、まだまだ課題は多いと思っています。

 

もう1本の柱が教学IRプロジェクトで、最も多くのエフォートを割いている活動です。プロジェクトという表現になっていますが、センタークラスの業務領域、業務量なので、ここはしっかり体制整備したいところです。とにかくやることが山ほどあって、毎週コアスタッフでミーティングをしていて、毎回2時間30分~3時間にわたって議論していますが、それでも追いつかない状況です。コアスタッフは、教学IR推進室の職員4名(教育開発支援室と兼務)と特任助教1名プラス私ですが、職員さんが本当に素晴らしくていつも感動しています。具体的には、入学時・卒業時アンケートや学生パネル調査の実施・分析、全学部への個別フィードバックやオーダーメイドの追加分析に加え、BIツールを活用した膨大な教務データの分析なども行っています。また、2020年度からは各学期ごとに、コロナ禍での授業・学生生活に関するアンケートを実施・分析して、授業実施方針に生かすなども行っています。一昨日まで第4弾の調査を実施していて、これから急いで取りまとめてフィードバック・公開を行います。今年度からは大学執行部を中心に構成された全学IR推進ワーキングも動き出し、全学的な見地から必要な事柄についてデータに基づく議論を行っています。書き出せばキリがないくらい色んなことを議論しながら進めています。とても刺激的で、まだ関大に来て間もないですが、かなり関大のことが理解出来ました。

 

これら以外にも、広報課からメディア対応や広報誌の依頼を受けたり、採択を受けた大学DX推進のプロジェクトにアサインされたりと、目が回りそうですが、熱心で優秀な職員さんが多いこともあってとてもやり甲斐があります。

 

最後に、授業は春学期・秋学期で大体8コマ担当しています。初年次のPBL科目や高年次のサービスラーニング科目、教職科目に、心理学特殊講義など、色んな種類の科目を担当していて、色んな学生に出会います。僕自身、深い学生理解に根ざした教育開発をモットーにしています。なので、色んな学生に出会って、関わることが出来て、これまで以上に学生のリアリティに触れられてとても楽しいです。

 

2022年も引き続き、しっかり地に足をつけて頑張っていきたいと思います。

2021年の振り返り〜その2〜

今年の仕事初めは明日からということで,少しゆっくり出来ています。年末年始で原稿を4本ほど書きましたが,それ以外はゆっくり過ごせました。

 

振り返りその1では,コロナ禍に関連した話題を中心に振り返りましたが,それ以外にも文部科学省日本学術振興会大学基準協会などの仕事もコンスタントに入っていたり,複数の学会の理事等の仕事もあったり,ベネッセ総合教育研究所の大学生調査や親子パネル調査に係るプロジェクトなんかもバタバタと入ってきたり,これまで通り東山中学・高等学校の教育顧問の仕事もあったりと,外のお仕事やプロジェクトも盛りだくさんな1年でした。

 

加えて,2021年の学外の講演・研修は22件でした(全てオンライン開催でした)。大体月2回くらいになるように調整しながら入れているので大体コロナ禍以前と同じくらいになりました。中には,その1で取り上げた中教審や私大連も含め,朝日ネットやBlackboardなど企業主催の講演,医学教育指導者フォーラムや大阪と京都の大学コンソーシアムなど,個別の学校ではないところでの講演も色々とありました。堺市教育委員会主催の研修では,初めて小学校の先生(プラス中学校の先生)を対象とした研修を実施し,いつも以上に緊張したのを覚えています。僕のメインターゲットは高等教育ではありますが,子どもの学びと成長・発達に必要な学校教育・支援は,高等教育だけで成立するものではなく,それ以前の段階との連続性の中で一貫性を持って捉えていかなければならないと考えています。理想を言えば,幼稚園から大学まで全ての段階に何らかの形で関わっていきたいと常々考えています。

 

高等教育に戻すと,2020年はコロナ禍での遠隔授業に焦点化したオーダーが多かったのですが,2021年はそれ以外の教学マネジメントや教学IR,内部質保証といったコロナ禍以前から文教政策の中心に据えられ,各大学で取り組まれていた内容に関するオーダーが多かった印象です。認証評価は待ったなしですし,コロナ対応に追われつつも通常運転に戻していかないといけないという意識の表れかと思います。

 

今回のコロナ禍での対応とそこから得た教育・学生支援におけるオンラインの活用(with大学DX)と教学マネジメントの機能強化を効果的に組み合わせて新たな価値を創造するという難題にしっかりと向き合い,適切なリーダーシップのもとで進むべき方向性を導き出し,舵を切っていけるか,ここで5年後10年後の大学の明暗がはっきりと分かれてくるだろうと強く感じています。

 

僕自身は,一人ひとりの学生と向き合うレベルから,大学全体ひいては文教政策全体のレベルまで,かつ,初等・中等教育をも射程に入れながら,これからの高等教育のあるべきカタチについて研究・開発・支援・実践を進めていきたいと思います。

 

オンラインばかりで議論する機会が減っているので,今年こそはそういう時間も取れると良いなと思います。

 

(大学でのお仕事の振り返りはその3にて・・・)

2021年の振り返り〜その1〜

コロナ禍で日付感覚が変になるなぁと思っていたら2021年も過ぎ去っていました。本当に早かったですね。

 

目一杯走っていたのもあって,あんまり記憶に残っていないのですが,だからこそ簡単にでも振り返っておこうかと思います。

 

正直,研究はあまり進められませんでした。教育そして関大での仕事(教育開発・支援等)にかなりのエフォートを割きました。コロナ禍ということもあるし,関大に来てまだ1年足らずということもあるし,それなのにたくさんの領域で色んな人が頼りにしてくれて,気づけばどっぷりと浸かっていました。それで良いと思っています。この大変な時期に力を注ぐべきところに力を注げたと総括しています。

 

いくつか執筆・刊行物はありますが,2021年3月刊行の『カレッジマネジメント』(特集「ニューノーマルの学生支援」)に寄稿した「学生の学びと成長を止めないニューノーマル時代の学生支援」では,コロナ禍で生じている学生の学びと成長について,Student SuccessやStudent Engagementの観点から整理することが出来たので,このタイミングで自身のスタンスを明確にする意味でも残せてよかったと思います。

 

続いて,6月刊行の『大学教育と情報』(特集「対面と遠隔(オンライン)を組み合せたハイブリッド型授業の進展と教育改革」)に寄稿した「ニューノーマルの学習評価をどう考え,実践するか」では,コロナ禍の経験を踏まえた学習評価のあり方について整理することが出来ました。

 

また,7月には中央教育審議会大学分科会質保証システム部会で「遠隔授業のインパクトとニューノーマルの高等教育」について報告する機会をいただきました。これも,コロナ禍で進むオンライン教育の可能性も踏まえた現状整理と今後の論点について提示することが出来て,良い経験になりました。

 

8月には日本私立大学連盟令和3年度教学担当理事者会議で「緊急対応型遠隔授業からニューノーマルの高等教育へ〜関西大学の取組を中心に〜」について報告する機会をいただきました。このように,色んな形で,コロナ禍・コロナ後の学びと成長に関わる問題を考え,整理し,報告・記述する機会がありました。

 

12月には読売新聞本社の取材を受け,スキャナー「大学対面授業「全面」二の足」(朝刊3面)にコメントが掲載されました。その後,同社別の部署からも取材を受け,近日中に掲載される予定です(コメントが載るかは分かりませんが)。メディアの方にもこの間起きていること,考えていることをお伝えし,世間一般に発信するところに微力ながら関わることが出来たのも良かったと思います。

 

やはりこの2年は,コロナ禍での学生の学びと成長をどう育むか,そのためにオンライン授業や対面授業,学生支援や学習支援がどうあるべきか,ひいては大学の果たす役割・意義は何かという問題に関わり続けてきたなと感じます。

 

引き続き,この問題は探究し続けたいと思います。

 

(結構なボリュームになってしまったので,振り返りはその2に続く・・・)

謹賀新年2022

新年あけましておめでとうございます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

2021年もあっという間に終わり,気づけばブログも半年近く更新していない状況で,今年こそはもう少し意識しなきゃなと思います。

 

2020年に引き続き,2021年もずっとコロナ禍にあって,常に一定の緊張感が強いられる中で生活・仕事をするという日常でした。みなさまも本当におつかれさまでした。

 

2020年10月に関西大学に異動して,丸一年が過ぎました。

 

年末学生に聞かれました。先生にとって今年一年を漢字で表すと何ですか?と。

 

私は「力」と答えました。

 

コロナ禍で教育も色んな制約を受けました。講演や研修も全て遠隔での実施となりました。直接人と会うことがままならない中で,常に画面を通じてこれらの営みをこなしてきました。

 

でも,だからこそ,ちゃんと想いを伝えたい,繋がれないからこそ力を込めて伝えたいという意識が今まで以上に強くなりました。対面授業がベースになってきても,どうすれば学生が笑顔になってくれるか,学ぶことや繋がることを楽しんでくれるかを,こんなに考えて実践した年はなかったと思います。

 

こうした未曾有の状況が自分に力を与えてくれた,そんな気がしています。

 

教育経験もそれなりに積んでくれば,多少力を抜いてもそれなりの授業は出来てしまいます。そうしたちょっとした気の緩みを正させてもらった,教育者としての力量はもとより,教育者として大切なことを気づかせてくれた,そんな気がしています。

 

制限・制約があるからこそ,大事なものに気づくことが出来るなぁと痛感します。

 

そして,学生たちは,私のこうした想いや熱量に呼応してくれます。

 

毎回の振り返りも過去にないくらいたくさん書いてくれるし,個別相談もたくさんあります。学生同士が繋がって声を上げて運動体を作っていってくれています。ゼミのようなものも始めました。授業ごとにLINEグループが増えていってちょっと大変ですが(笑)

 

数年前に教育におけるエンゲージメント(とりわけ情緒的エンゲージメント)の重要性に気づき,それを研究の中核に据えてこの間探究していますが,コロナ禍でそのことの意味・意義がとても大きいことを痛感しました。

 

2021年の個別の振り返りは改めてしたいと思いますが,まずは第1弾ということで。

 

みなさまも健康に気をつけて,良い年になりますように。

 

山田

大学教育学会第43回大会を終えて~大会運営の振り返り~

先週末6月5日(土)・6日(日)と、大学教育学会第43回オンライン大会(関西大学が担当校)が開催されました。私は、実行委員会副委員長(委員長は学長なので、実質的な統括責任者)および企画委員という形で、大会の企画から当日の運営までがっつり携わりました。緩急の差こそあれ、何やかんやで半年近くは準備にかかったと思います。

 

何はともあれ、大きなトラブルもなく、無事に終えることができてホッとしています。

 

参加されたみなさま、お疲れさま&ありがとうございました^^

 

今回、大学教育学会としては初めてのフルサイズのフルオンラインでの大会でした。昨年度は実施できなかった自由研究発表や情報交換会も復活させ、海外研究者によるオンデマンド配信も組み込みました。学会としてはこれも初めてとなる大会HPの設置や当日の配布資料を共有するためのDropboxの設置などにもチャレンジしました。また、従来のように、旅行代理店に委託したり、会計システムを外注したりといった形は取らず、学会事務局と連携しながら新しい大会運営システムを作り上げました。

 

結果、484名の事前申込があり(総参加者数はカウント不可)、自由研究発表83件(22部会)、ラウンドテーブル企画15件と、過去の対面大会に比べると少ない(RTは同程度)ものの、十分役割を果たして次につなげることはできたのではないかと感じています。

 

しかし、そんな初めてづくしの大会運営は、本当に苦労が多かったです。過去のマニュアルがほとんど使えないこともそうですが、全てのことをオンライン上で行わなければならないため、対面時のように人手をかき集めて一気にやるというより、特定少人数が深く関与して細かな調整を行いながら全てPC上で進める必要があったため、認知的負荷も相当大きかったです。また、実行委員のコアメンバーは全て本学職員(非会員)であり、本務の仕事がある中で関わってもらうため、彼らの上司を含めとても気を遣いました。この心苦しさが常に僕の心にあったので、正直、精神的負荷も相当高かったです。

 

今回もう一つ大変だったのが、大学を会場として使えなかった(使わなかった)ことです。大会全てをオンラインで、となると大会校のインフラに相当の負荷とITセンターのサポートが不可欠となります。今回それは難しいという判断から、別会場を借りて大会本部を設置することにしました。それが大阪コロナホテル@梅田の会議室でした。コロナホテルからコロナ禍の大学教育の挑戦を届ける。すごくイイね!シンポジウムの最後にもサラッと言わせてもらいましたが、みなさまのところで爆笑は起きていたでしょうか?それだけが心配です。

 

しかし、こうしたオンライン大会の大変さを最も身にしみて感じたのは、結局のところ、ヒューマンエラーによるものです。これはあまり聞き心地の良い話ではないのですが、特に大会前最後の一週間はこの対応が相当キツかったです。どういうことかというと、今回当日受付という概念はなく、事前申込・振込が必要だったのですが、申込期限を過ぎてから申し込みたいといった問い合わせ、発表エントリーはしてるけどお金を振り込んでいない、団体会員で払っているのに個人でも払って2重払いになっている、振り込んだ後のキャンセル依頼、IDが分からずログイン出来ないなど、数日の間にこうした問い合わせがものすごい降ってきて、実行委員会と学会事務局、システムを管理しているガリレオとの間で頻繁にやりとりをする必要がありました。

 

こちら側ももっと周知の方法等考える余地はあったのかもしれませんが、色々といっぱいいっぱいの状況下でしたので、次回以降に課題として引き継ぎたいと思います。

 

本日13日まで、参加者アンケート(Googleフォーム)の回答をお願いしています。今見たら210名の方が回答してくれています。まだの方がおられたらぜひお願いいたします。ざっと見ると、大会の全体満足度は「約95%」と非常に有難い数値となっています。ドキドキのオンライン情報交換会の満足度も今のところ「100%」です!自由記述にもたくさんのポジティブなメッセージを寄せてくれているので(やっぱり「対面がいい」と「オンラインがいい」という意見が拮抗しますね)、実行委員のスタッフみんなと共有させてもらいます。ありがとうございます!

 

最後になりますが、今回実行委員コアスタッフとして関わってくれた職員(特に、私が所属する教育開発支援センターの職員)のみなさんは、本当に頑張ってくれたんです。もちろんそれ以外の部署の職員さんも!学会の仕事が勤務時間中にも及ぶ時は、本務を時間外で行なったりと、決して望ましい形ではなかったと思います。僕が何度も「本当にすみません」と言っても、「大丈夫ですよ!」と笑顔で応じてくれるスタッフたちに心から感謝を申し上げたいと思います。今回の大会を成功裡に終えることができたのは、この「チーム関大」の結束力によるところが大きいと痛感します。こんなスタッフたちと日々仕事ができている自分は幸せだなとも感じます。

 

ここではお見せできませんが、僕が「大会本部の一部始終をタイムラプスで撮ったら面白くないですか?」って言ったら、GoPro持ってきて撮影してくれて、テロップまでつけて共有してくれました。僕にとっても宝物になります。その大会1日目の最後に収められたみんなとの一コマを挙げて、大会運営の振り返りを終えたいと思います。

 

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いよいよ新年度が始まりますね

みなさま、元気にお過ごしでしょうか。

 

私は元気です!

 

ブログに書きたいことたくさんあったのに、ほんっとうに慌ただしくて、全くそれどころではありませんでした。

 

関大に異動して半年。ものすごい色んなことに関わらせてもらって、とても刺激的で充実した日々でした。それ故に、ペース配分も考えず、がむしゃらに走ってきたので、研究室のダンボールも荷解きしきれていない状況です。

 

ゆっくり振り返る間もありませんが、振り返る暇があったら前に進もうの精神で、新年度に臨みたいと思います。

 

コロナ禍はまだ猛威をふるい再拡大の状況下ですが、みなさんも身体に気をつけて、少しでもよい1年になりますように。

 

モカちゃんも元気です♪♪

 

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3大学合同IRフォーラム(3/6)のご案内

私が所属する関西大学教育推進部/教学IRプロジェクトが主導で,以下の通りの教学IRに関する合同フォーラムを開催する運びとなりました。

 

教員個人の経験や学生個人の感覚で語られることの多いコロナ禍での大学教育について,学生調査の結果(データ)から考えるという趣旨のイベントになります。この間,多くの大学で学生調査が実施されましたが,実態把握に止まっていて,そのデータをどう分析し,結果をどう学内の施策・方針に反映したのかという点では,必ずしも十分に生かし切れていないのではないか。せっかく集めた学生の声をそこに繋げてこそ意味があるのではないか。そのように考えて,今回の企画を立てました。

 

また,コロナ禍で奮闘したのは教員だけではなく,職員の奮闘も本当に大変なものでした。なかなか表に出ることのない職員の奮闘があったからこそ,この1年を駆け抜けることが出来たのだと思っています。そのような視点からも今回のフォーラムを位置づけているので,ぜひご参加いただけれれば幸いです。

 

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3大学(法政・明治・関西大学)合同IRフォーラム「コロナ禍におけるこれからの大学教育を考えるー学生調査の結果から、なにを学び、どう生かすのかー」

 

 この度、3大学(法政・明治・関西大学)合同IRフォーラム「コロナ禍におけるこれからの大学教育を考えるー学生調査の結果から、なにを学び、どう生かすのかー」を開催する運びとなりましたので、下記のとおりご案内申し上げます。

 2020年は、新型コロナウイルス感染症の拡大により、大学教育においても、「学びを継続する」ことを念頭に、変革と工夫の実践を積み上げた1年となりました。そのような中、多くの大学で、学生の実態把握と教育改善の観点から学生調査が行われてきました。例えば、関西大学においては、春学期は遠隔授業、秋学期は対面授業を原則として実施し、遠隔と対面の両方を経験した学生を対象に全学調査を春・秋の計2回実施しました。結果は、コロナ禍で遠隔となった様々なものを、単に対面に戻すだけでは大学の価値が上がらないというものでした。
 では、私たちはそのような結果からなにを学び、どのように生かすのか。「学びを継続する」ことを念頭に置いた1年から、遠隔と対面を駆使して「大学の価値を高める」次のステージにどう歩んでいくのかー。多くの共通課題に対して情報交換や共同の取り組みを推進していく「3大学連携協力協定」を締結する法政大学、明治大学関西大学がともにこの課題を考えていきたいと思います。各大学が行う調査や学生の声を教学IRの視点から読み、「これからの大学教育」という深く広いテーマで議論をする機会として、本フォーラムを開催します。

※話題提供者には教学IRの業務に携わる職員も登壇いたしますので、教員のみならず、職員の方々からも積極的なご参加をお待ちしております。
※【前半】のみの参加も可能です。

【日時】
2021年3月6日(土)13:00~16:15

【実施方法】
オンライン(Web会議システムZoom Webinar)

【プログラム】
総合司会:土井 健嗣(関西大学 教育開発支援室・教学IR室)
パネルディスカッション・ワークショップモデレーター:山田 剛史(関西大学 教育推進部)

【前半】パネルディスカッション
13:00~13:05(05分)開会挨拶  前田 裕(関西大学 学長)
13:05~13:15(10分)趣旨説明  岡田 忠克(関西大学 学長補佐)
13:15~13:35(20分)話題提供1  川瀬 友太(関西大学 教育開発支援室・教学IR室)
13:35~13:55(20分)話題提供2  千田 亮吉(明治大学 副学長(教務担当)兼教務部長)
13:55~14:15(20分)話題提供3  井芹 俊太郎(法政大学 総長室付大学評価室 IR担当)
14:15~14:45(30分)パネルディスカッション
         川上 忠重(法政大学 総長室付大学評価室室長)
         千田 亮吉(明治大学 副学長(教務担当)兼教務部長)
         岡田 忠克(関西大学 学長補佐)
14:45~14:50(05分)前半終了・事務連絡 
14:50~15:00(10分)休憩

【後半】ワークショップ
15:00~15:10(10分)後半進行説明
15:10~15:40(30分)ワークショップ
テ ー マ:「コロナ禍における学生調査の結果から今後の大学教育を考える」
 ※少人数に分かれた意見交換会
15:40~15:50(10分)休憩
15:50~16:10(20分)全体共有
16:10~16:15(05分)閉会挨拶 大津留 智恵子(関西大学 副学長)

【対象】
大学の教職員および一般の方

【お申込み方法】※事前申込制
3月3日(水)までに、下記フォームよりお申込み下さい。
 https://bit.ly/3pvmkl2

※申込受付後、登録メールアドレスに視聴URL(3月5日に送付予定)をお送りいたします。
※申込多数の場合は、受付を締切ることもございますので、お早目にお申込ください。

【参加費】
無料

【お問い合せ】
関西大学 教学IR室事務局
E-mail:ctl-staff@ml.kandai.jp

日本アカデミック・アドバイジング協会設立大会(3/13)のご案内

この度、日本アカデミック・アドバイジング協会(JAAA)という団体を立ち上げることになりました。

 

私は当協会の発起人の1人として関わることになりました。アカデミック・アドバイジングの研究や実践そのものを行っているわけではありませんが、協会が目指すStudent Successや、正課内外での学生の学びと成長支援、そのための教職員の専門性の向上といった理念・方向性には強く共感するところであります。

 

協会の設立に伴って、以下の通り設立大会を開催します。同タイミングでHPも公開するべく準備を進めています。

 

以下、開催イベントの案内です。興味・関心のある方にご紹介・転送いただければ幸いです。

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このたび「日本アカデミック・アドバイジング協会」設立大会を開催いたしますので、以下ご案内いたします。

 

大学において個々の学生ニーズの支援として発達してきたアカデミック・アドバイジングは、学生を成功に導く(以下、スチューデン ト・サクセスとする)ための支援です。
そこで、「スチューデント・サクセスを促すアカデミック・アドバイジングの理論と実践の方法論を、日本の高等教育において確立し、普及する」ことを目的として、2021年3月、「 日本アカデミック・アドバイジング協会」を設立する運びとなりました。
つきましては、このたび「日本アカデミック・アドバイジング協会 」設立大会を開催いたします。

学生の成長にかかわる個人あるいは組織の支援やサービスのあり方 にご関心がある方はどなたでもご参加いただけます。協会活動への 参加は今後の学びのネットワーク構築にもご活用いただけます。

大会当日は、当協会の設立背景、目的、目指すべきところをお伝えするのはもちろんのこと、海外との交流も見据え、既に国際的なネ ットワークを持つ米国アカデミック・アドバイジング協会のチャーリー・ナット代表からのメッセージ(録画)や、 今後の業務に活かすことができる事例の紹介、ワークショップ型のケーススタディをご用意しています。
以下に当日のスケジュールをご案内します。

 

〈「日本アカデミック・アドバイジング協会」設立大会〉
【開催日時・方法】
 2021年3月13日(土)13:00~16:00(オンライン開催)

【プログラム進行(予定)】
 13:30~13:20 日本アカデミック・アドバイジング協会設立の趣旨説明
 13:20~13:30 NACADAからのメッセージ
 13:30~15:45 アカデミック・アドバイジングとは、アカデミック・アドバイジングの事例報告およびグループディスカッション
 15:45~16:00 今後の協会活動

【参加費】
 無料 ※本協会の設立大会となるため、無料としております (今後、会員以外は参加費徴収予定)

【申込期間】
2021年2月10日(水)~3月5日(金)17:00

【申込方法】

以下のURLにアクセスし、必要事項をご記入ください
https://forms.gle/SsHXV8aCUGRPJPJT7

 

ご興味ある方は、ぜひご参加ください。スタッフ一同心よりお待ち申し上げております。


協会発起人(順不同、敬称略):清水 栄子(追手門学院大学)、池田 輝政(U&Cストラテジー)、馬本 勉(広島県立大学)、私市 佐代美(武庫川女子大学)、岸岡 奈津子(立命館大学)、岸岡 洋介(京都外国語大学)、秦 敬治(岡山理科大学)、御厨 まり子(明星大学)、山崎 めぐみ(創価大学)、山田 剛史(関西大学


〈お問い合わせ先〉
日本アカデミック・アドバイジング協会 事務局

2つの学内広報誌に掲載されました

昨年,学内広報誌に書いたものが2つ刊行されました。

 

1つ目は,私が所属する教育開発支援センター(CTL)のニューズレターです(画像右)。

 

着任の挨拶を兼ねて,「学生エンゲージメントの視点から大学を問う」 と題して少し書きました。原稿はCTLのホームページ(以下URL)にも掲載されています。

 

https://www.kansai-u.ac.jp/ctl/activity/pdf/34ctlnews_all.pdf

 

2つ目は,広報課から依頼を受けて執筆し,『関西大学通信 Kandai Style』(Vol.486)に掲載されたものです(画像左)。 

 

今号は「2020 コロナ禍の大学生活を振り返る」という特集で,春学期に実施した調査結果や広報課が収集した調査を交えて,コメントさせてもらっています。原稿は広報課のホームページ(以下URL)にも掲載されています。

 

https://www.kansai-u.ac.jp/ja/assets/pdf/about/pr/tsushin/486.pdf

 

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いずれも,コロナ禍での大学や大学教育,学生の学びや成長について,考えていることを限られた字数ですが,書いています。

 

長文という形では,現在『カレッジマネジメント』の原稿を執筆中ですので,改めてご紹介したいと思います。

 

本当に色んなことを考えさせられますね。

学生を信じ抜くこと:学習から成長パラダイムへ

この数年、自身の教育観が随分と変わってきたように感じます。

 

教授から学習へ、といった一般的に言われている点で言えば、教員になった当初から学習パラダイムに依拠してきています。

 

教育の力点を学習あるいは学習者に置いて、彼らがどう学び、成果を獲得できるか、という考え方です。

 

今もその考え方は否定しませんが、私にとってより重要なのは、学習の質や学習成果の多寡ではなく、成長の促進にあるようです。

 

学習パラダイムから成長パラダイムへのシフトと言えるものです。学生が大学という空間、大学生活という時間の中で、いかに成長できるか。授業や教育を通じて、いかにそれを促せるか。そのために、教育者として学生とどう関わるか。私にとっての最大関心事はそこにあるようです。

 

今回のコロナ禍でさらにその想いが強くなりました。また、新年ということもあり、以下の映画を観ました。

 

『奇跡の教室 受け継ぐ者たちへ』という映画です。2016年に劇場公開されたフランスの映画です。Amazon Primeで無料でした。便利な世の中です。詳しくは以下の通り。

 

実話をもとに、学校から見放された問題児たちの集まるクラスが、ベテラン教師の情熱によって次第に変化していく様を描いたドラマ。貧困層が暮らすパリ郊外のレオン・ブルム高校。様々な人種の生徒たちが集まる落ちこぼれクラスに、厳格な歴史教師アンヌ・ゲゲンがやってくる。情熱的なアンヌは、生徒たちに全国歴史コンクールに参加するよう勧めるが、「アウシュビッツ」という難解なテーマに生徒たちは反発する。そこでアンヌは、強制収容所の生存者を授業に招き、彼らの経験を語ってもらう。その壮絶な話を聞いた生徒たちは、その日を境に変わっていく。本作にも出演したアハメッド・ドゥラメが自身の体験を映画化してもらおうと動き出したことから実現した作品で、ドゥラメはセザール賞有望男優賞にもノミネートされた。(映画.comより)

 

すごく良い映画でした。自分の教育観に合致しているなと痛感しました。そして、成長パラダイムに立脚して教育に関与する上で最も大切なことは、単に学生を信じるだけではなく、「信じ抜くこと」だと強く感じました。

 

学生と関わっていると、「何でこんな風になってしまうんだろう」とモヤモヤすること、こちらが一生懸命働きかけても裏切られることはしょっちゅうあります。そこで、「やっぱり所詮学生は…」とならずに、何故そのような振る舞いになってしまうのか、どうすればその学生の想いを理解できるのかを考えていきたいし、そのためにも信じ抜く覚悟がいるなと思います。

 

教育に係る細かな理論や方法論、精緻なデータ以前に、この当たり前のようなシンプルなことが出来れば、大学はもっと良い学びと成長の場になるのだと思います。

 

こんな考え方は業界関係者には全くウケないと思いますが、それでえぇやんと思っています。

 

そんな考え方を持って、教育者として、教育開発者として、関与し、研鑽を積んでいこうと、気持ちを新たにした2021年の三賀日でした。

 

2021年、あけましておめでとうございます

謹賀新年、あけましておめでとうございます。

 

昨年中、お世話になったみなさまには改めて御礼申し上げます。

 

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

 

コロナ禍は依然として落ち着く兆しがなく、2021年を迎えても不安で不安定な日常が続きます。

 

様々な情報に翻弄され、期待し裏切られ、常に力み続け、息継ぎが出来ない1年でした。

 

今年は、慌てず、落ち着いて、惑わず、流されず、着実に、確実に、出来ることをしっかりやって、健康(守り)と挑戦(攻め)を実現したいと思います。

 

みなさまにとって、2021年が素敵な年になりますように。

 

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2021年1月1日

山田剛史