人生考路

高等教育開発を生業とする青年心理学者、山田剛史(京大准教授)のブログ

多様性の中で生きるということ

先日、普段あまり見ない民放を付けたら「奇跡体験 アンビリバボー」をやっていた。

 

「奇跡の会社 日本一幸せな従業員とは?」という見出しが気になり、チャンネルを切り替える手を止めた。「幸福(感)」というものに対して、個人としても、教育研究者としても日に日に強い関心を持つようになってきている。

奇跡体験!アンビリバボー:奇跡の会社 日本一幸せな従業員とは? - フジテレビ

 

そこで取り上げられていたのが日本理化学工業という会社だ。チョークを製造する会社で、国内最大のシェアだそうだ。会社概要はさておき、この会社の最大の特徴が、多くの障害者を従業員に抱えて発展してきているということだ。全社員85名中63名、約7割以上が知的障害者で構成されている。

 

番組では、この会社が何故、どのようなきっかけで障害者を受け入れるようになったのが、創業者のインタビューも交えながら紹介されていた。

 

さまざまなトラブルを経験している。こういってはなんだけれど、想像に難くない。会社経営という観点からすれば、どうしても困難な部分が生じてしまう。

 

そうした中で、それでも雇用し続けて、なおかつ利益を上げ続けている。

 

何故か?

 

答えは単純だった。障害があるから普通なら出来ることが出来ない、だから排除する、という考え方に帰属させるのではなく、その人がどうすれば出来るようになるかを周囲の人が考え、そのための道具を考案したり環境そのものを変えたりする。

 

そうすると、出来なかったことが出来るようになる→周囲から認めてもらえる→自分が役に立てていると感じる→嬉しい→もっと貢献したい→頑張る→結果が出る、という流れが出来上がる。

 

2月24日のブログ(「発達障害を有する学生の実態と移行問題」)で書いた「医学モデル」から「社会モデル」へのパラダイムシフトの典型例と言えよう。

 

取組内容については会社ホームページにも詳細が記されている。

障がい者雇用の取り組みについて/日本理化学工業株式会社

 

教育研究に携わる者として、この取組にとても感銘を受けたと同時に、学校の中でこうした障害を持つ子ども(障害を持たずともマイノリティとして生きづらさを感じている子ども)が幸せに学び成長していける環境をどうすれば作っていけるかを考え、実践していかないといけないと強く感じた。

 

多様性の理解、多くの教育機関が目標の一つに掲げているけれど、どこまで出来ているのだろうか。

 

例えば、具体的な例で言うと、自身が関わっている中学、高校、大学の教員あるいは学生から、「障害を持つ学生や協同作業に支障を来す生徒・学生がいるためにアクティブラーニングなどグループワークが上手くいかない、別々にした方が良いのでは、関われない子は仕方ないのでそのまま進めて良いか、そうしてはいけないのか」という声を聞くことが少なくない。

 

僕はこの答えに迷うこともあった。もちろん、大筋として、上記のような対応についてはNOというのが回答だ。

 

何のためのグループワークなのか。社会に出れば色んな人と協同しながら仕事を進めないといけない。自分がやりやすい人とだけで出来る仕事なんて存在しない。色んな人がいるから、色んな考えが知れるし、新たな発見も出来る。その楽しさを体験して、多様性という渦の中に飛び込んで欲しい。

 

こうした経験をたくさんさせてあげるのが教育機関の役割なのだと思う。そんな子どもたちが社会に出て、日本理化学工業のような会社を創っていってくれればどんなに明るい幸せな社会になるのだろう。

 

経済成長という切り口だけで突っ走って息切れして疲弊感が蔓延する中で、さらに業績主義や管理主義が徹底されていく現状を打開するのは、上記のような思想に基づく教育の創造なのではないだろうか。

 

つい堅苦しく大袈裟な話に広げてしまったけど、要はとっても感動したという話。

 

小さな声でも一歩ずつ自分に出来ることを精一杯やっていこう。