人生考路

高等教育を生業とする青年心理学者、山田剛史のブログ

研究上の3つの問い

この時期、修論や博論の提出とそれに伴う口頭試問や公聴会、大学院受験で提出された論文とそれに伴う口頭試験とで、たくさんの論文を読んで、たくさん面談します。

 

関係者のみなさん、お疲れさまです!

 

その過程で色んな分野の先生方ともやりとりをするので、とてもいい勉強になります。

 

また、研究職を目指す大学院生と日々接することは、こちらにとってもいい刺激になります。

 

そんな中で、研究を行う上で大事にして欲しい問いを3つほど紹介したいと思います。細かいテクニックは色々あるわけですが、上記の面談等を通じて、特に研究初期においては意識しておいて欲しいなと思ったので書き留めておこうかと。

 

1. オリジナリティは何か?

色んな先生が最も発している問いです。この問いに応えるのは容易ではありません。そのためには、以下のような点をクリアしないといけないからです。

 

  • 先行研究をしっかり読み込む
  • 自分の研究の位置づけを(多角的・相対的に)明確にする
  • 学術研究の作法を理解し、対応する
  • 研究を通じて得られたこと(成果)と得られなかったこと(課題)を自覚する

 

こうしたことを怠った研究で主張される「オリジナリティ」とは、結局のところ「独り善がり」なものでしかないのです。

 

大体、学生が主張するオリジナリティのほとんどは上記の点がクリアされていない、また、新しいと思っているもののほとんどは先行研究で説明出来てしまうものです。

 

学生はよく「(自分がやろうとしているテーマの)先行研究は少ない」と言います。聞いてみると、ピンポイントのキーワード検索のみで判断していることが多いです。でも、こんなキーワードも関連してるよね、なんて話していくと狭い視野で判断していることに気づきます。

 

とは言え、これは僕らでも難しいことです。

 

京大では早くからこうやってオリジナリティを磨くことの重要性を折に触れて問うています。

 

とどのつまりは、先行研究をめっちゃ読んで、徹底的に考え抜きましょう、ということになります。

 

2. リサーチクエスチョンは何か?

先行研究をたくさん読めばいい研究が出来るかというと、それだけでは十分ではありません。真面目な学生、社会人で学びに来ている学生などに見られがちですが、研究ではなく「お勉強」になってしまっています。

 

たくさん読んで、整理して、書き起こす。大事な作業ですが、その営みを通じて明らかにしたい問い(リサーチクエスチョン)があって始めて研究へと昇華します。僕が修士課程1年の学生に提供している必修科目の序盤では、ここを固めることに力を注ぎます。

 

その手前には、素朴な疑問(臨床的な問い/クリニカルクエスチョン)があり、それをRQの形に絞り込んでいきます。

 

RQが決まれば、自ずと最適な研究方法や分析技法の選択、結果の解釈の方向性も決まってきます。

 

なので、「いいRQ」はいい研究に必要不可欠だと思います。

 

そして、いいRQには、やはりたくさんの研究に触れて、研究の実現可能性や適切性について判断出来ていなければなりません。

 

自分は研究を通して何を明らかにしたいのか。シンプルですが、ここにこだわって見てください。

 

3. 誰に届けたいのか?

もう1つの問いは、その研究を誰に届けたいのか、です。

 

もちろん、純粋に事象を理解・解明したいという場合もあると思いますが、特に僕が関わっている高等教育などでは、とりわけこの問いが大切な気がしています。

 

言い方を変えれば、誰のための研究か、ということも出来ます。

 

「現場の教員のため」という学生は多いのですが、その研究、本当に現場に届くかな?と疑問を抱くことは少なくありません。

 

現場に役立つ研究だけが良い研究でないのは言うまでもないことですが、この問いは、自分の研究を評価・改善する上で大切じゃないかなと思います。

 

少し大げさな言い方ですが、たくさんの研究に触れていると誰に届けたくてこの研究をしているのか何となく分かるようになります。そうやって、論文という成果物を通じて「顔」が見えてくるとワクワクします。

 

そんな研究者を応援したいし、自分もそうありたいなと思います。

 

そんな研究者たちとつながれるといいな。

 

研究に携わる方々に少しでも想いが届きますように。