人生考路

個人と社会のウェルビーイングを高める教育と学びを探究する

結構効いてくる!?入学時の行動タイプ

前回に引き続き、もう少しベネッセの大学生調査の結果から考えてみたいと思います。

 

本調査では、以下のような行動タイプを入学時と現在とで聞いています。

 

①自分から積極的にやりたいことは探してやる

②与えられれば興味をもってやる

③与えられても、よほど興味がなければやらない

 

その割合が下図です。 

f:id:tsuyomickey:20180118203253p:plain

 

単純な項目ですが、これが結構色んな変数と効いてくるんです。この項目は、同研究所が2015年に約20,000人の社会人を対象に実施した「大学での学びと成長に関するふりかえり調査」で設定して分析していました。その時にも様々な変数と関係(積極的なタイプはそうでないタイプよりポジティブに関係)していることが示されました。

 

berd.benesse.jp

 

その傾向は大学生でも同様でした。入学時にどのような行動タイプを有しているかで、入学後の学習への関わり方や得られる成果などに差異が見られるというものです。

 

割合としては主体的行動タイプの学生は約3割ということになります。逆に4人に1人は、非常に消極的な行動タイプの学生です。アドミッションポリシーや入試などで、大半の大学では意欲・関心・態度を評価項目に含んでいるわけですが、このあたりの整合性はどう見たら良いのでしょうか。

 

ちなみに、本調査では、現時点でどうかという点についても聞いています。 

 

しかし、全体の割合は入学時とあまり変化がありません。これは同一学生で見たときに変化していないのでしょうか。物事(学習など)に対する捉え方や関わり方はなかなか変わりにくいといった指摘あるいは変化しやすいといった指摘もあります。

 

まず、入学時と現在との間の関連について、相関係数を算出したところ、r=.200(p<0.1)と非常に弱いものでした。これを見ると、在学中に変化していることが予想されます。

 

次に、入学時と現在とをクロスさせて、変化の傾向について見てみます(下図)。

 

f:id:tsuyomickey:20180118211017p:plain 

  • 「変化なし」を合わせると、44.8%と全体の半数近くは入学時と変化していないという結果でした。
  • 「向上変化」を合わせると、30.5%とおよそ3人に一人という結果です。こうした学生がなぜ向上したのか、特に、入学時には非常に消極的だった学生が、積極的になったケース(L→H)(6.2%)など、さらに細かく見ていくことで大学教育の課題解決の糸口が見えてくるかもしれません。
  • 逆に、「低下変化」を合わせると、24.7%とおよそ4人に一人が入学後に消極的な行動パターンへと変化しています。特に、入学時には非常に積極的だった学生が、消極的になったケース(6.1%)など、さらに細かく分析することは有益でしょう。 

 

もちろん、回顧式調査という制約上、結果の解釈には一定留意する必要はありますが、入学時の行動タイプという指標は、在学中の「伸び代」を予測する上で効果的な変数の1つではないでしょうか。

 

 

学生の満足度、なぜ下がるのか

学生の満足度調査は多くの大学で実施されていると思います。

 

満足度は大学教育の成果として重要な指標の1つでしょう。各大学では、満足度の向上を目標に掲げ、様々な教育・学習環境の整備を行っています。

 

ベネッセ教育総研が2008年から4年ごとに実施している全国大学生調査の3回目の結果が先般アップされました。

 

berd.benesse.jp

 

私も第1回調査から研究メンバーとして関わってきているのですが、データを見ていて気になる点について考えてみたいと思います。

 

その1つが学生の満足度の低下です。

 

この10年余、大学教育改革は一定進展し、学生を取り巻く教育・学習環境はより良いものになっていると思います。そう言い切って問題ないと思います。

 

にも関わらず、調査を行うごとにあらゆる面での満足度が低下しているのです。

 

f:id:tsuyomickey:20180116011811p:plain

上記報告書p.19より抜粋)

 

この結果をどう解釈することが出来るでしょうか。

 

個人の満足度(感情)は相対的なもので決まると思います。

 

  • 大学全体が環境整備に着手する前は、みんな「そんなもの」だと思っている。だから特に不満足感を覚えない。
  • 環境整備が進むと(いくら進んでも、どこを見渡してもという状況になるのはほぼ不可能に近い)、「あれ、なんかあの学部、あの部署、あの先生、あの職員、いい感じやん。それに比べてうちの・・・」となる。だから不満という感情が相対的に生起されてしまう。
  • SNSの発展で、大学を超えて学生同士が情報共有することで更に相対化される。しかも、正の情報より負の情報の方が発信・拡散されやすいので、その部分が強化されてしまう。

 

もっと広げて言うと、大学全体が、社会全体が、CS(顧客満足度)を重視した利便性の追求を行うことによって、学生の中の「やってもらって当たり前」「不便=不満」という意識が醸成されているという側面もあるかもしれません。

 

これは、学生の学びへの受動性(あるいは自律性)とも絡む問題で、結構根が深いものだと考えます。

 

大学経営が厳しい中、満足度は進路選択や在留率にも影響することから、無視は出来ないものの、その在り方は上記のような形で変動してしまうため、関係者は注意して捉える必要があるように思います。

 

なかなか悩ましい問題です。

 

みなさんの大学では、いかがでしょうか。

ぜひ、経年で比較して、なぜそのような変化が生じているのかを考えてみると良いのではないでしょうか。

 

ちなみに、現在、申込期間中ですが、この調査をベースに教員、職員、学生でこれからの教育を創造するワークショップを実施します。こんな風にデータを読みながら、これまでの足跡を振り返り、声を重ねながら、これからの教育を考える、そんな機会に足を運んでみませんか。

 

berd.benesse.jp

はてなブログはじめてみます!

2018年に入り、大台にも突入したし、自分自身の棚卸しをしようと思って、ブログも見直そうということになり。

 

今までは、自身のHP(yamatuyo.com)を格納しているレンタルサーバーに付属するブログを使ってきたのですが、もうちょっと今っぽさと使いやすさを備えたブログサービスないかなぁということで、思い切って登録してみました。

 

www.yamatuyo.com

 

ちなみに、これまでに執筆・公開してきたブログです(2008年12月〜2018年1月)。

 

yamatuyo.sblo.jp

 

ぼちぼち慣れていきたいなと思います。

 

f:id:tsuyomickey:20180114165040j:plain

(ドローイングソフトで書いてみました!) 

 

よろしくお願いしますf^^*)