前回に引き続き、もう少しベネッセの大学生調査の結果から考えてみたいと思います。
本調査では、以下のような行動タイプを入学時と現在とで聞いています。
①自分から積極的にやりたいことは探してやる
②与えられれば興味をもってやる
③与えられても、よほど興味がなければやらない
その割合が下図です。
単純な項目ですが、これが結構色んな変数と効いてくるんです。この項目は、同研究所が2015年に約20,000人の社会人を対象に実施した「大学での学びと成長に関するふりかえり調査」で設定して分析していました。その時にも様々な変数と関係(積極的なタイプはそうでないタイプよりポジティブに関係)していることが示されました。
その傾向は大学生でも同様でした。入学時にどのような行動タイプを有しているかで、入学後の学習への関わり方や得られる成果などに差異が見られるというものです。
割合としては主体的行動タイプの学生は約3割ということになります。逆に4人に1人は、非常に消極的な行動タイプの学生です。アドミッションポリシーや入試などで、大半の大学では意欲・関心・態度を評価項目に含んでいるわけですが、このあたりの整合性はどう見たら良いのでしょうか。
ちなみに、本調査では、現時点でどうかという点についても聞いています。
しかし、全体の割合は入学時とあまり変化がありません。これは同一学生で見たときに変化していないのでしょうか。物事(学習など)に対する捉え方や関わり方はなかなか変わりにくいといった指摘あるいは変化しやすいといった指摘もあります。
まず、入学時と現在との間の関連について、相関係数を算出したところ、r=.200(p<0.1)と非常に弱いものでした。これを見ると、在学中に変化していることが予想されます。
次に、入学時と現在とをクロスさせて、変化の傾向について見てみます(下図)。
- 「変化なし」を合わせると、44.8%と全体の半数近くは入学時と変化していないという結果でした。
- 「向上変化」を合わせると、30.5%とおよそ3人に一人という結果です。こうした学生がなぜ向上したのか、特に、入学時には非常に消極的だった学生が、積極的になったケース(L→H)(6.2%)など、さらに細かく見ていくことで大学教育の課題解決の糸口が見えてくるかもしれません。
- 逆に、「低下変化」を合わせると、24.7%とおよそ4人に一人が入学後に消極的な行動パターンへと変化しています。特に、入学時には非常に積極的だった学生が、消極的になったケース(6.1%)など、さらに細かく分析することは有益でしょう。
もちろん、回顧式調査という制約上、結果の解釈には一定留意する必要はありますが、入学時の行動タイプという指標は、在学中の「伸び代」を予測する上で効果的な変数の1つではないでしょうか。